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2024年08月18日23:44

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「フォールガイ」を見て。〜痛さも怖さも超えられるのは、俺が現場を支える撮影スタッフに皆で創り上げる映画、そして何より君への愛で満たされた命知らずだからさ〜

CG仕様となった今現在のユニバーサル映画のロゴ映像と同時に流れる、70年代ディスコ全盛期に生まれた白塗りメイクの四人組のロックチューン一発で、このオッサンである観客は2時間少々のこの作品との「付き合い」に、あっけなく乗せられてしまった。

聴けば元ネタは往年のTVドラマなのだそうだが、流石にそれは見ていない。賞金稼ぎを兼業するスタントチームの活躍を見せていたらしいのだが、そのキャラクターは映画作品として、オスカー候補にも名を連ねる男女実力俳優によって磨きが掛けられ、スタントマン出身の監督によって新たに編み出された。

「俺は、おまえを愛するために作られている」懐かしのロックナンバーのサビで繰り替えされる通り、冴えなくツイていないスタントマンの男が、想う女に現場もプライベート関係なく尽くすロマコメアクションであり、強いては、製作現場を舞台にそこをよく知るスタッフが謳いあげる映画作り賛歌ではあるけれど、あくまで肩の凝らないポップコーンムービーの範疇で、ゆるく気負わず、肩の凝らない作品であります。

フォールガイとは、高所から落ちるヤツ、つまりは本来それをやらなきゃいけない演者の「身代わり」となるスタントマンを指して。本作の物語の骨子であるサスペンス要素も、そこに掛かっていて、作品を追って行くと黒幕も自ずと洗い出される。危険に身を晒して現場で如何に貢献しようとも、実際は汗をかかない映画作りの権力を握る者に簡単に握りつぶされる。

そんな悲哀を背負った主人公コルトを演じるのが、これまた、この前の「バービー」での献身と好演がオスカーで報われない不運続きのライアン・コズリングである。あらためて出演履歴をあたると、擁護するほどは作品を見てなくて申し訳ないのだけど。数少ない見た作品の内「ナイスガイズ!」での、相棒となるラッセル・クロウにどやされ、男手独りで育てている娘にも恰好良いところを見せられない弱気な探偵にも「報われなさ」で相通ずるところがありました。

コルトが長い事想いを寄せる監督のジョディ役が、やはりこの前のオスカーを逃してしまったエミリー・ブラントさんというのも、巡り合せの妙を感じてしまいますが。「オッペンハイマー」の妻役での「つっけんどん」な感じは、当然無いけれど。ブランクを経てコルトは、彼女と撮影現場で再会するも、初監督作でナーバスになるジョディは、挨拶代りの高難度スタントをこなしてもツレなくて。独り車の中で、カーステレオから流れるテイラー・スウィフトの歌を口ずさみつつ、ジョディと良い関係だった頃を回想して涙ぐんでいるところを彼女に見つかってしまう気まずさを取り繕うライアンさんは、危険な見せ場をこなす「動」に対する「静」でもしっかりバランスを取って、ご自身も製作も携わる本作を引っ張ってゆきます。

映画製作にまつわる話なので、会話や、キャラクターが仕事で係わった作品として、同ジャンルの過去作名やシュチュエーションや流れる伴奏曲のアレンジにも「引用」があったり、描かれる人物や経緯なんかにも、実際の役者や製作者にまつわる人物像や事件をなぞってみたくもなったりして。まあ、詳しくなくとも、お金をかけた見せ場もあるし、前述の通り、それほどアメリカンジョーク寄りでなく、異国人にも判り易い「くすぐり」が幾つか用意されているうえに、それなりに溜飲が下がる展開になっているので、チケット代は担保されているでしょう。

今の時代らしく、ライアンさんが役柄通り冴えない分、エミリーさんの立場が強目の男女の会話劇、スクリューボールコメディでもあって、その妙味が昔風の分割画面とかでも展開する中、初監督で思い詰めるジョディに対して、まずはお客さんに、ハッキリとした結末を見せようとアドバイスして。描き方によっては、それこそこれまで見て来た、表に出る事のないスタントマン稼業の悲哀とか、裏方を軽んじて、空虚な「商品」を乱造する業界への糾弾へも舵を切れたのだろうけれど、そこに踏み込まない分、ミステリーやサスペンスの帰結が、「チャンチャン」の擬音を挟んでも違和感は無かったりもしますけど。

この春にIMAXの大画面で見たかのような世界観に、それに係っていた思いがけない特別出演者をフィーチャーしたジョディの初監督作品の「予告編」のお披露目に至る過程に、スタントマンは表彰されない現状の提示だとか、シリアスにのめり込まないようにしつつも、現状打破に向けた密かな抵抗と、時代の変化の中でも、映画作りの現場を楽しむスタッフが活き活きと描写されていて。「ブレットトレイン」でもそうでしたが、タランティーノ氏ほど、強い拘りを見せないながら、先の冒頭から、エンディングまでの「あの曲」の引っ張りにも見える、デビッド・リーチ監督の音を使っての作品の染め上げ手法に、すっかり馴染んでしまいました。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネマサンシャイン沼津 シネマ�イ砲�

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