宮本輝
三千枚の金貨
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あんまし褒めませんでしたが、最近はこんなもんかな。
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もしも、私の目の前に実在したら、私は必ず方向を見誤ってしまうような魅力的な女性が描かれている。
宮本輝は、そういう女性を描くのが天才的にうまい。室井沙都が水墨画先生(小宮先生)のことを話すところがある。
書きとめておきます。
「小宮先生は、水墨画の基礎だけを教えて下さるの。 筆の持ち方、墨のすり方、墨の濃淡の作り方…。○を何百回も描いて、次は横線を一本、それも何百回も描いて、」
どんな世界にも基礎としての決まり事がある。 この決まり事をしっかりと修得しておかないと、自分独自なものは生まれてこない。いわば不動の型で、それをおろそかにして我流で次ぎに進もうとしても必ず行き詰まってしまう。
「いまはとにかく自分で描きたいものを忠実に写生するようにって言われてるの。鉛筆でいいのよ。でも忠実な写生でないと駄目だ、って。適当なデフォルメは断じて認めない。風景をスケッチするとき、遠くの電線四本を、ずるして三本にしてはならない。瓦屋根の瓦の数を誤魔化してはならない。私、それを先生の仰有るとおりにやってて、ひとつ気づいたことがあるの」
「私はこれまで風景を見ても花を見ても、人間の顔を見ても、じつはなんにも見えてなかったんだ、ってこと。 斉木さんも一度やってみたらいいわ。 奥さんの顔がいちばんいいかもしれない」
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