あれが、春だったことだけは覚えている。
だが、何か驚くようなことはひとつも蘇らない。
桜が咲いていたかどうか。
鳥が鳴いていたかどうか。
あの子は海を好きだといったことが一度もなかった。
湘南の鉛色の海を眺めながら、別れという言葉を避けるように、立っていた。
もう、今夜には一緒に居れないのがわかっているだけに、横殴りに降りかかる雨が憎かった。
それが夏の始まりのころで、
それから一年も経たない間に私たちには数々のドラマが訪れ、
一度傷ついた作品を元に戻せないのと同じように、
しかもその傷が光を返して揺らめくように、
あの子の時間と私の時間が、あざなえる縄のように縺れていったのだ。
そう、それから
一年も経たないころだった。
だから、春だったのだ。
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終楽章ふたたび。
【銀マド】に、ふたたび、そんなものを…と思った。
しかし、それにはエネルギーがいるのだ。
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