もしかしたら今後、この存在を超える大スターは、現れないであろう唯一無二の存在であるトム・クルーズ氏の「金看板」である、このシリーズ最新作にあっては、予告や紹介記事で知らされるスタントシーン以外にも、数々の見せ場が用意されている。
シリーズ最長上映時間にあっても、売り物の本人直々による「見せ場」の単なる数珠つなぎで終わらず、自然と展開に没頭出来て、冗長に感じるようなダルさを一切感じず、「前段」の幕が下りる。
単なる主演俳優の立場だけでなく、製作者として作品を世界市場に送り出す義務も背負ったトム様。シリーズの回数を追うごとに、準備も大掛かりでハードルも比例して高くなっていって。それもこれも、演者兼製作者ならではの、サービス精神なのでありますが。とにもかくにも、本気のスタントを見せるのが、演者トム様の「使命」になっているこの頃で、去年の「トップガン マーヴェリック」は別格として、他の作品への出演では、「М:i」シリーズの壁が立ちはだかるというか、高い「自己基準」にもなってしまっている感が拭えない。
観客奉仕も良いのだけれど、60歳も過ぎたのだし、ご自愛して頂いたうえで、「ザ・エージェント」のような、普通の人のキャラクターとして「悲喜こもごも」で泣き笑いさせるコメディ調の作品に出て貰いたいけれど。映画製作関係者も養わないとならないから、もう無理なのかもしれない。
話題休閑。遡ると、1作目が27年前の本シリーズ。「アンタッチャブル」に続いて、往年のTVシリーズのスクリーンへの橋渡しを請負ったデパルマ監督以降、メガホンのバトンを繋いで作品の「カラー」の固定化を避けていたかに受け取れていたけど。本作を含め、ここ3本は、クリストファー・マッカリー氏の座付状態で連投が続いている。
聴くと最近のシリーズ製作は、製作者トム様の見せ場のアイデアが先で、ストーリー作りは、それに合わせて行くのだとか。さすがにアイデアが出た時点で、ストーリー作りに入るのだろうけれど。それを知ったうえで、過去2作を思い出すと、巨額を掛けて、数か国にロケする規模のデカイ作品なのに、よくぞ取りまとめるものだと感心しきり。
本作は、単に創作のテクニックに留まることなく、現在の世界を包む「不穏な空気」をストーリーの「核」に落とし込むと共に、キャラクターの心情や動機付けにも連動していて。座長のトム様が、命を賭けた見せ場を、殺さぬように繋げるだけに終わらず、観客を登場人物へ同調させ、作品世界にのめり込ませる。巨費をつぎ込んだ渾身の見せ場でも、時に、ロマンティックな優雅さも忍ばせれば、時に、権力の影の存在である諜報部員の非情さも指し込まれて、派手さの「大味」だけの印象ではない。
一見、生死の境を生き延びる者として、「甘さ」を覗かせる場面も、後に訪れる絶対の危機を迎えた時に回収されると同時に、手に汗握っているところ、心の中で「なるほど!」と叫ばせるかの溜飲を下げる展開となって。世界中の観客の期待に応えつつ作品の質を維持する為に、マッカリー監督を囲い込んでいるワケが、つくづく判るというものです。
毎回、世界を破綻させる「危機」を、人知れず、でも派手な見せ場でもって救って来たトム様のイーサン・ハントと彼が率いるМ:iフォースの面々であります。それで今回は、いわゆる「AI」が、ターゲットなのですが。怖いのは、単に電子頭脳が世界征服の「意志」を持つとかではなく、デジタルの繋がりを通して、「不適切なもの」を計算結果通りに導くべく、人々の誤解を誘発する映像や、音声を創り上げて「AI」は、邪魔な存在を排除した計算上の秩序を創り上げる。それゆえに、各国が疑心暗鬼となって。作品中では、「それ」と称される存在ですが、それにアクセスする二つの鍵の争奪戦が、ストーリー推進の動力となる。
イデオロギーとか超越した、善悪の判断と別の提示された事実が、ホントかウソかで操られる。生成AIが、国防省炎上のでっち上げ画像をSNSに流すとか、前大統領のSNSでの呼びかけで議会に支持者が暴徒としてなだれ込むとか、語られるのは全くのフィクションではない。本編では、米国政府も「それ」を握ろうと暗躍するので、本来であれば大統領直轄のイーサンの組織も、そこに加担しないとならないのだが。AIに創り上げられた「統治」を毅然と拒む、彼らは、当然、追われる立場となって、四面楚歌の不利な活動を強いられる。
本編中、特に地味なイタリアはベネチアの水路の場面が、自分としてはポイントに写りました。「それ」によってイーサンのチームは、窮地に追い込まれて、いちファンとしても大いなる「損失」が生じてしまう。これを受けて、イーサンは、「メンバーは、総て、死なせない」と決意表明。そして、公開前から、宣伝画像として取り上げられる、予告では何度と見ていたハズなのに足元から震えが来そうな、「大脱走」のS.マックイーンを遥かに超越したトム様決死の崖からのバイクジャンプも、先のイーサンの表明の後だから、心中には彼の燃える心意気が伝わって来て。ただ凄いスタントを眺めるだけでなく、今回は、特に入り込めて。作り手の創意に、まんまとハマまった次第。
お馴染の登場人物から、久しぶりの登場の方達に、本作で新たに登場する人物まで、こちらも作り手の意図が行き届いていて、各々作品を彩っておりました。ストーリー展開と共に、何人か「消息」が気になる人物も居て、PART TWOの完成が見終わるや、待ち遠しい心境に。
拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネマサンシャインららぽーと沼津 IMAX劇場にて
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