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2023年05月06日23:38

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「BlueGiant」を、また見て。〜だから「音」が、届く〜

近隣のシネコンで、スクリーンの広さと多くの席数を誇る最大キャパの劇場には、何でも再生能力の高い映写機とアンプを備えていて。そこで、作品を掛けるにあたり最大出力で音を響かせる「臨場感体感上映」と称してお披露目している。

公開日から、2カ月を過ぎてもプリントが返却されるどころか、先の特別仕様のデッカイ劇場で掛けられたので、その健闘を称えるのと、ツレが、まだ見ていないのもあって、再度劇場へ足を向けました。初見以来パソコンで予告動画等を再生して反すうして来たけど、劇場で見るのに勝るものはない。

ただ、音響や映像への私の感度が薄いのか。「臨場感体感上映」で、格段に違ったかは結局判らず。もともと、それら装置が導入された最初の作品「ジョーカー」も、音に関しては、エンドロールで流れるクリームの「ホワイトルーム」が、際立って聴こえた以外は、あんまり装置の恩恵を感じなかったな。

本作を見る直前、同じ劇場で「シン・仮面ライダー」を見たけれど。こちらでは、本編が始まる冒頭に、音響再生の仕様が、外国人女性のナレーションと共にロゴ表示されて。「シン」は、「Dolby surround」と断りが出て、こっちの「BlueGiant」は、「Dolby7.1Channel」と表示されたのですが。ああいうジャンルものだから「シン」の方は、耳障りに近い音響エフェクトを期待するところだけど、それに反して割と整って本編の進行を邪魔しない感じに終始していた。

対して、私の集中の前提があったのかもしれないけれど、若きジャズメン3人が奏でる楽器の音色に意識が向いていたのもあってか、それぞれ際立って耳に入って来た。加齢と共に聴力が低下しているだろうけど、音を浴びる位の大音響ではなかったか。330席の広い劇場空間よりも、はじめに見た106席のそれこそ、劇中のライブバーに匹敵するある程度の狭さがあった方のが、残響が届いて、この作品に向いていると結論付ける。

あら、本編とは関係ないところで、字数費やした。

サントラを買えば(YouTubeでは、作曲者公式のチャンネルで音源聴ける。)音楽を楽しめるけれど、本編での演出込みで、再び体感したくて出掛けて、その目的は、施設の効果の是非以前に、充分果たせたので問題なし。

妊娠中に一緒に出掛けた大西順子さんのピアノリサイタルも、ツワリで最後まで聴けなかった体験以外に、あとは家で私が流すCDのみのジャズとの接点である我がツレでも、「BlueGiant」での楽曲には心動かされたと申すほど、音楽に絶大な説得力を持つ本作ですが。あらためて、練り上げられたフィクションである事に唸る。さすがに、話の筋を知っているので、涙腺の崩壊を今度は避けられたけれど。ただ、キャッチーな楽曲を当てはめるだけでは、耳馴染みのない観客まで、果たして作品に引き込む事が、出来たか。

主人公宮本大は、果たしてテナーサックスのカリスマ奏者なのかと、見る者の疑念を検証する間も無く、現代を舞台にした成長ドラマにしては、純粋、単純に映る「俺は、日本一のプレイヤーになる」って目標の実現だけに、物語を一本の筋に絞って、突っ走る。それに、巻き込まれるカタチで、トリオを組む他の二人の葛藤に絞り、楽曲表現もそれに即して、周到にクライマックスに引っ張っているのが、巧妙で、観客の胸を高鳴らすのは必至となっている。

二人の内、ツレの贔屓は凄腕ピアニストの沢辺雪折だけど、私は、急造ドラマーの玉田俊二の方です。CV担当の岡山天音さんが、一向に上がらないスキルに苛立って、「やらされているんじゃない、俺がやるんだよ」と、楽器演奏の習熟では水を開けられて、一長一短にドラムの演奏が追い付かない自身を叱咤するのが、また、切なくなるのだけれど。

でも、結果、3人が10代の内に、ジャズのステージの最高峰に立つ目標を実現させて。1年半で、ドラムを習得してしまうのだから。もちろん、フィクションなのだけれど。そこに至る、「苦闘」が、それまでの演奏描写で、音楽や、映像表現を用いて補足されている周到さもあって。クライマックスが、色々と揺さぶられるのだ。

これを書く前に、ドラム経験者が、劇中沢辺クンが、バンド用に書き下ろす楽曲を実際に演奏して、初心者の玉田にも演奏し易い譜面になっていると教える動画を見て、益々、本編スタッフの創意が、(主に、音楽担当の上原さんの貢献でしょう)細部に至っているのに、敬服いたしました。

その動画で取上げていたのは、葛飾ジャズフェスで、3人が演奏する「N.W.S.」でしたが、この場面の演奏表現が、やっぱり一番好き。「THE FIRST SLAM DUNK」の様にとはいかず、モーションキャプチャー表現も、出し惜しんでいる感に捉えられそうだけれど。画像から、手描きで写すロトスコープだとか、演奏表情も、ずうっと目を瞑りっぱなしってのも無く、演奏者同士のアイコンタクトもあったり、仕草・呼吸を写実的に拾うところに、こまめな盛り上がる客席の描写挿入もあったり。あの大ヒット作と、方針の違いを明らかに見せるのが、演奏者の「ノリ」を視覚化した、エフェクトを盛り込んだ背景処理。

多分、宮本大のテナーサックスの音を発する「ラッパ部分」がモチーフなんだろうけど。金の発色が、円形から形をゆがめ、琥珀のしずくへ形を変えて。はたまた、演奏者の全身をメリーゴーランドにのったオブジェの様に、手前から向う側へグルっと回すだとか、ステージのリアリティだけではなく、演奏者や聴く者のイメージも取り込んで。

この辺も、ただの実写ステージ記録映像では、不可能な芸当。クライマックスのステージでは、そういうイメージは、排除して、客席の反応の挿入と同時に、駆けつけた人たちと演奏者の過去のエピソードのフラッシュバックが挟まれて、ひのき舞台で演奏に集中する3人のドラマを想起させて、渾身のナンバーを更に盛り立てている。これら総て、フィクションならではの企て。

ベストセラーの小説や漫画を手に入れたら、映像化は、それだけで成功するものでは無く。新鮮で、美味しい「材料」も、作り手の腕がなければ、その評判通りには成立しないのが、ツクヅク判るというものです。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネプラザサントムーン劇場��にて 23.4.13

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