疾走(重松清)を読んでいるせいか…。 (いいえ)急に、外を自転車で飛んでみようかと思い立った。
家から数百メートルのところに川がある。この川に沿って道を下ってゆけば海まで行ける。30分ほどだ。
自転車をゆっくり漕ぎ出して、川から少し離れた農道や工事中の道路を探検しながら海岸まで行く。今は満ち潮だろうな、満月近いし、そんなことを思いながら堤防に向かって一直線の道をヨイショヨイショと自転車を漕いだ。
空がどんよりとしているから、海も灰色だ。予想通り満潮で、波打ち際の水の音がぴちゃぴちゃと聞こえてくる。
もう冬鳥が来ているだろうし、今度は一番引いたときに双眼鏡も持ってくることにしよう。
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帰りは近回りのルート。堤防を走って川を遡ることにした。
堤防は、河口から最初の堰まで1キロ以上続いている。子どもの頃に泥遊びで作ったチョコレートのように、万里の長城のような台形をしたコンクリートのつながりだ。もちろんガードレールもなければ、道路の脇に線が引いてあるわけでもない。
…と。
そこを走って昔を思い出したのですよ。
高校3年の11月14日。それはどしゃ降りの夜でした。町の本屋に参考書を買いに出かけたら、国道を救急車が飛んでゆくの聞いた。
同級生のM君は、取り立ての車の免許で夜のドライブ中、この堤防じゃないけど、もうふたつほど北を流れる大きな川の河口の、こんな形をした堤防から、車の運転を誤って海に落ちていったのです。隣には彼女が乗っていました。
彼女を抱いて岸まで泳ぐ途中に力尽きたという。でも彼女は助かった。
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そうか。
あの日はどしゃ降りだったけど、満月のころだったんだな。潮の引き始めた海にアイツは落ちたのか。そんなこと、今まで想像もしたことがなかったよ。
わずか1時間ほどの散歩なんだけど、また来ようかな。
引き潮のときに来よう。
どうしてって、引き潮って、大きく息を吐いたときのように、緊張感があるんです。その静けさが好きですね。
| 海はきらいさ 悲しくなる
| 二人の恋が ウソだと笑う
(北山修詩集から)
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