ちょうど1年ほど前のことだ。北野天満宮の天神さんの前日だったと思う。娘の入学試験か、試験の後の手続きだったか、記憶は曖昧だけど、そんな用事で上洛していたときのことだ。
今出川通りをバスに乗って来て天神さんの前で急に思い立って降りた。祭りの前ということで、お店の屋台には幌が被せてあって、参道の人影も疎らだ。小降りの雨の中を傘を差しながら梅の花を見上げた。
ヒヨドリが枝から枝へと忙しそうにしている。ピヨピーヨと啼くのだが、その姿は、可愛い声とはちょっとずれて、決して鮮やかではなくむしろ地味な井出達だ。
満開の梅林のねきを傘を差して歩く。まだまだ手が冷たい季節だった。
あっという間に月日が過ぎて、再び花の季節を迎えた。
今年は温暖化で、雪の便りもほとんど聞かない。
東風吹かばにほひをこせよ梅の花あるじなしとて春な忘れそ
誰もが知るこのうたを思い浮かべるときに、数々の才能に恵まれ波乱万丈の人生を送りながら最期は大宰府で消え果てるという、この人の無念の生涯を連想してしまう。
春の陽気と報じられた数日間と打って変わって、きょうは冷たい風が吹いている。冷たく静かに時雨れる日に北野の梅を見上げるとき、人の人生の儚さを連想し妙に哀しさがこみ上げてくる。
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