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2026年06月25日23:19

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「NEW GROUP」を見て。〜口付けしたい体のパーツの選択、ナイス自由です〜

ある日、校庭で四つん這いに構える男子生徒が、校内のみならず周囲の住人達も巻き込んで。とうとう運動会レベルに収まらない重厚な「人間ピラミッド」を形成するに至る。その巨大な生きたオブジェを背にした校長に対峙するのは、組体操の集団入りを拒絶する帰国男子の優と気弱な女生徒の愛。その校長は、「征服欲」の体現ではなく、巨大ピラミッドも生命体であるヒトを摂取する存在ではなく、ただそこに居るのみ。

人が生きていくうえで、翻弄するもの、因果を拭えないもの、価値観を照らすべく出来事や事象だとか、そこにあるものに象徴して描く「不条理劇」若しくは「前衛劇」。邦画で思い出すのは、代表的作品として揺るぎない「砂の女」ですが。本作は、原作ありきの映像化にあらず。商業作品2作目となる下津優太監督によるオリジナルのうえ、今日日やたらと尺が長い作品が蔓延る中、1時間半無いランニングタイムという事で、見る側の余地を介在させる間も無く、不条理劇に巻き込み圧倒してくれるのではないかと期待して出かけました。

結論を申すと、前衛的訳の分からなさに押し切られながらも「不条理」を突きつけられて、矛盾ややるせなさにつまされる域には達せず。エンドロールを見ると、協力に日体大とあって。劇中に組まれる人間ピラミッドもそうですし、文化祭準備に追われる夜の校内の廊下に現われる組む人の足を掴んで「輪っか」を組んだ複数人が前転しながら、取り込まれていない「個体」の生徒を襲うとか。主要キャストでないモブ的存在にして運動能力を求められるシーンとかを日体大の方々が、作り手のアイデアを文字通り体現していたのだろうと、忍ばれますが。

登場人物の、優や愛が住むのは良くある住宅街なのだけれど。人間ピラミッドが現れる校庭は、小高い丘の上の土グランドで。大人数を街中の学校グラウンドに集めて撮影するには、支障が多そうだし。それは、もう一人の観客のイチャモンに過ぎないのだが。予算はじめ制約があるのは致し方ないところなのだけれど。訳の分からなさが、雪だるま式に時間を追ううちに呑み込むほどの大きなうねりとならずに、幾つかの「塊(かたまり)」が思考上に残って点在してしまうのが惜しい。

組体操で出来た壁に押し出される様に、優と愛が校長室へと追いやられて。そこで、校長役のピエール瀧さんが、体制を統べる者の内心を組体操の生徒達を周囲背後にはべらかしつつ代弁します。余談になりますが、それがラップ調で。瀧さんと言えば、我が郷土出身の音楽ユニット電気グルーブのメンバーではあったけれど。当時よりも、音楽的表現に取り組んでいるのかも。ともかく、要約すると「家族、学校、会社と個人を集団の単位にまとめ上げるのは、操る側には都合が良いから、地域、日本、地球そして宇宙規模に集団を作り上げなければ。そして、自由を集団に委ねてしまうのはヒトが、そこに入ってしまえば楽だけど。操る側は、そこに至るまでの恐怖を与える」と汗だくノリノリで説いて。社会を揺るがした、宗教団体の詐欺事件だとか、果ては政治団体に属する議員の成り立ちとか。本作の「核」を怪演で魅せる。

本編は、山田杏奈さん扮する愛の主眼で進みますが。彼女の家庭のタダならぬ雰囲気だとか、他人の言動に振り回されガチの気弱な彼女が遭遇する陰湿な女生徒間のイジメに、青木柚さん扮する優(山田杏奈さんの役名と併せて、You&Iで、集団に対する個を代表している)には、団体行動を重んじる日本教育に馴染めないのにも動じず自分を貫く姿に惹かれ掛かるところを彼からなじられる心境の揺れとか。すんなりと、集団が醸し出す「同調圧力」にあがなう個人の図式として、訳の分からぬ怖さや勢いに呑まれる図式が現れず。「寄り道」要素が幾つも用意されているのが、見る側の脳裏に引っかかりを残すことになって。

でも、そんな「未昇華」な部分を残してクライマックスの大ピラミッドとの対峙場面となるのですが。愛の過去に係る家族の問題解決でひと悶着あった後、ぐったりした愛を背負って我が家に居られない彼女を独り暮らしのアパートへ優が負ぶって行く道すがら、背負わされた彼女が、弱っているのに乗じて優のアゴを触れる一瞬が、集団に屈してしまうかとするところ、反抗の起点を称する「場面」に活かされて。

ひとりひとりの在り方に気を取られず、個を捨てる事を自由と履き違える集団に属してしまえば手放されるその人のこだわりというかフェティシズムが、映倫のレイティングには引っかからない愛の交感場面に現われる描写は、校長先生の恐怖原理の主張シーンへの「対抗」としても見所となったので、単にアイデアが活かしきれずと斬るには惜しいです。春樹社長の頃とは勢いも力も違う現KADOKAWAですが、是非3作目も下津監督に撮らせる育成姿勢を貫いて下さいませ。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございます。
シネマサンシャインららぽーと沼津 シネマ2にて

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