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2026年05月31日23:40

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「スマッシング・マシーン」を見て。〜屈強な見た目からは知り得ない心の隙間〜

実在の総合格闘家を描く本作は、リング上の闘いの興奮や栄光を飾り立てて届けられてはいないので、一時のカタルシスを求めると肩透かしを喰らわされるハメになるかも。

それを危惧するのは、この夏もメジャースタジオのブロックバスター作を背負うドゥエイン・ジョンソンの主演作品だから。

近所の劇場に4D Xが新設された時に、お試しで見たワイルド・スピードのもう何年か前の過去作でお目に掛かったくらいで、その後は身銭を切る事は無かったけど。現在ドル箱スターとして座長を張り続けていて、ガタイだけの「時の人」で終わらず異業界で勇者となって、流石なものだ。

そう、元々がリングネーム、ザ・ロックとしてプロレスラーとして活躍していたドゥエインさんは、キワモノ的端役からマネー・メイキングスターの地位を手に入れて。人気に続いて評価も手に入れようと企むほど世間知らずのお調子モノだったら、この業界からとっくに消えているだろうけれど。ブロックバスター作の合間に、自身も製作者としてお膳立てしてまで、過去のご自身に相通ずる格闘家を演じる姿勢をいきに感じる程の親しみも無いのだけれど、過去の先輩達のようにいずれは肉体の衰えと共にエクスペンタブルス・クラブ入りも想像できるところ、その意欲、試みに感心を覚えたうえに、「レンタル・ファミリー」、「マーティ・シュープリーム」、「アメリと雨の物語」と日本が舞台として描かれる外国作品を見る繋がりが出来ているので、更にそれに繋ぐ意義と併せて出かけました。

偶然、我が国も舞台に入る事で被ったのだけど「マーティ〜」の監督の弟の方が本作のメガホンを執ってます。更に、主人公が敗北から再挑戦に挑む「大筋」までも揃っているのですが。アスリート、競技者の心理状態、内面、そしてコンディション作りにシッカリと焦点を当てて、係わる競技とそれに挑む人達に向き合う真摯な姿勢がハッキリ伺える点では、本作の肩を持ちます。(2000年前後が時代背景の本作に対して、1950年代というある意味「時代劇」な向うの作品の方が、東京ロケに関しては、ハードルが高くその分再現に対する敬服も相まって「マーティ〜」に軍配が挙がる)

一度、頂点を極めるまでは、順位や報酬の上がり具合と競技意欲が比例してモチベーションもあがるけれど。王座に座っての「景色」を楽しむのも束の間で、下から上がって来る自分よりも若い者にポジションを脅かされて、プレッシャーが掛かるうえに、カラダにも綻びが現れて。アスリートではないけれど、ステージで激しいダンスを見せるアーティストが、痛みを紛らわせるために手を出した「鎮痛剤」の中毒症で命を落としたって話も耳にしておりました。ドゥエイン氏演じるマーク・ケアーが、意識を無くして病院に担ぎ込まれる。「鎮痛剤」と文字で起こすと、頭が痛いときに飲む錠剤かと頭に浮かぶところ。チッサイ硝子瓶のアンプルに入った薬液を注射器で、自ら血管に打ちこむ。それも、体には良くないとは知りつつも、手を出さざるを得ず。なるほど、命を落とす事態とも背中合わせになる訳と、本作で知見も得た次第。

マークは、同じ格闘家で友人のマーク・コールマンの通報で入院して中毒から脱して、リターンマッチに向けて、「対策」を体に染み込ませるべくトレーニングを積むのだけれど。「勝ちに」不思議はあっても、「負け」にそれは無く。特に、お話を盛り立てる様な、劇画的なトレーニングや、挑戦者に対して、布石を敷いて勝ち取る大勝利描写は廃しています。

私は、一度も、日本で主催されながらも見なかったけれど、「PRIDE」という総合格闘技自体、シビアな戦いで、ちっぽけなミスや出遅れを捉えられて相手に圧倒されて雌雄を決してしまうのもあるのだけれど。地道にスパーリングを重ねておきながら、努力も一瞬で水の泡に帰してしまう。「それは、あっという間だった」とリングを降りたケアーが、振り返る。リングに上がった事が有る者が発するからこそ、その呆気なさ、虚無感といったものが納得できる。

総合格闘技に比べたら、「筋書きがある」と言われるプロレスではあるけれど。体を鍛え上げてリングに上がって相手と張り合った経験があるロック様だからこそ。そして、映画界で名を馳せている今だからこそ許されると、この役にご自身を重ねたのだと想像します。

過去にドゥエイン氏と共演した際に、「盟友関係」が築かれたのか、ケアーの妻役としてエミリー・ブラントさんが、付き添われております。これが、ケアーを心身共に支えて、彼をリターンマッチに向かわせるとか良妻役かと思いきや。結局は、二人の関係からアスリートの内面など普通の人には容易に理解出来ないと示されて。イメージとしては、決してご自身にはプラスにならないのに。トレーニングオフの日に、遊園地に出かけて、体を気遣って妻一人だけ遊具に乗って。ケアーと妻交互にその姿を繋げる件は、「溝」を感じずには居られません。

地道に演技の道で努力を積んで来たのではない、所謂ぽっと出の立場で演技賞を獲得できないのはドゥエインさん本人が、当然判っているでしょうけれど。でも、本作で、歩んで来た自身の過去に通ずる役柄に向き合った事は、この先のキャリアの土壌を豊かにするのは間違いないかと。対戦前に、友人でもしかしたらトーナメントで戦う事にもなり得たマークを連れて東京ドームの駐車場入り口から入場を待つ日本人ファンの熱気に触れに会場の外に二人して出て。それに、気が付いたファンから歓声が上がって、満身創痍でもリングに上がる「意義」を、言葉少なに表情で見せるところは、表現者として最高の見せ場でした。

東京ロケに関しては、エミリーさんと上野をぶらつく場面とかあって。「人払いとか、大変だったろうな」ってのは、過りましたけれど。そんなロケーションコーディネートはさて置き、我が国からは、演者として、あのキングダム大沢たかおさんが、「PRIDE」のコミッショナー役でご出演なのですが。ドゥエインさんから、ルールについて異議申し立てを受ける場面だけで。大沢さんじゃなくってもって感じでした。記者会見の司会・通訳役の光浦靖子さんは、意外な一面を広められて良かったねって感じで。やはり、印象強いのは、本人役として試合前セレモニーで、君が代をギター演奏した布袋寅泰氏でしょう。なんなら「新・仁義なき戦い」主題曲いや、「キル・ビル」の挿入曲のリフも、混ぜちゃえば良かったのに。

作品評価に関係ないですが、高額賞金を掲げて外国人選手を日本に呼ぶ格闘技大会が1990年代の頃には開催出来て。それを思うと、国力も下がったのを改めて痛感。更に話は変わりますが。アップになった時、ドゥエインさんの耳、格闘家らしく見事に潰れていると目に留まりましたが。そう言えば、「国宝」と並んで、アカデミー賞のメイクアップ賞に、本作で担当した日本人の方もノミネートされたのを、後で確認・認識したのでした。

拙文にお付き合い頂き、有難うございました。
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