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2026年04月13日00:07

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「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を見て。〜知性とハートは、弾力性のある筋肉で出来ている〜

地球に降りかかる壊滅的存亡危機状況に、任命された者が命を賭して挑む一部始終の緊迫とスケール感を今の最新ビジュアルで盛り立てて。大画面と閉じられた闇の空間で、体感するに相応しい。この手の作品の到来はね久々の感もあって。製作発表からの待望感を、満たして頂きました。

原作本は、未読ではあります。宇宙空間で、太陽エネルギーを享受出来なくなっている異常現象が、地球にもそう遠くない間に到来しそうで。観測により11.9光年先に異常現象をモノともせず残っている惑星が突き止められた。

途方もない彼方へ到達を達成する事だけでも至難の業なのに、更には目的の惑星で死滅に至っていない現象を解析して遥か遠くの地球へ連絡便を発射してフィードバックせねばならず。運と生命力と気力・体力に何より頭脳を兼ね備えたうえに、孤独にも折れないド太い精神力が備わっていないと任務の完遂には至らないであろう。

この怪奇といっていい異常現象調査過程で発見された「科学的起爆」を推進力とした宇宙船の運用で遥か遥か遠い旅に付くとしても、本当にそこに辿り着くのかも保証が無く。そのうえ何と言っても頼みの「推進力」は、目的の惑星に着いて探査活動を行うまでの片道切符。人類を救う名誉ある任務は、カミカゼアタック、自殺的で生還は保証されておらず。故に、一か八か(ヘイルメアリー)計画と、まさに投げやりな命名がされているのだ。

一介の中学生教師が、存亡危機回避の計画に駆り出されて任務に相対するまでを時系列を追って描かれると決めつけて銀幕に向き合えば、ライアン・コズリングさん扮する主人公グレースは既に航行する宇宙船の中、コールドスリープから目覚めて。反射作用の「俺、誰」の自分認識回復を図りつつ、現状把握で船内を確認すると同船していた他の船員は人口睡眠措置から永遠に目を開く事の無い遺体となっていて。宇宙の片隅にただ独り取り残された状態が振り出しで見せられて、意表を突かれる。

グレースは、両肩に掛かる任務の重さから自己を律して使命対峙するというより、目前に起こる事象に自身の好奇心から持ちうる知識や頭脳を駆使して敢えて演算と船内外作業に没頭して。他に感情を向かわせない様に、仕向けていたのかもしれない。人類の運命が掛かった任務遂行の「現在」の時間軸と併行して、どうしてグレースは、地球から11.9光年先に送り出されるハメになったかの「過去」が織り交ぜられる。

地球の危機を救うという一人の双肩には背負いきれない「大義」に殉じ行く偶像として、祭り上げるのではなく。宇宙の彼方へ「大義」を押し付けたうえで追いやられ、無重力の暗闇に漂い追いやられた「たった独りの人類の境遇」に向き合って。学会から追い出されて、たまたま家族も居ないばっかりに押し付けられた我が身を誇って大義に邁進するのか。それとも、憐れみや絶望から、宇宙に浮かぶ星に帰すべく「さよなら人類」と自ら生き方を断つのか。グレースの胸の内、孤独な状況と内面の対峙が紡がれる。

時制の行き来や、化学的考察が含まれる描写とかあって取っ付き難さも覚える向きも御座いましょうが。そこは、道中に現われた、同じ大義を背負って漂流していた異星人ロッキー(岩みたいにゴツゴツしている見立てからのグレースの命名)との出会いを経てのバディ形成過程で蹴散らされる。

作戦の命名にある通り「藁をも縋る」薄氷を踏み歩くに等しい指示であるところ。亡くなっても哀しむ者も居なければ、社会的な居場所も学会を追われて教員職に追いやられているからと、グレースの存在は軽く捉われていて。地球上の帰属も途方もない隔たりによって断たれたのも同然だし、任務も放棄したとしても地球で統括する者達に「未遂」と解釈されるだろうし。

外には、ちっぽけな独りの人類なんか塵のように呑み込んでしまう大宇宙があって。デヴィッド・ボウィの代表曲の一つ「スペース・オディティ」の歌詞にある、地上の管制室とのやり取りの途中、船外に自ら出て宇宙へと導かれるトム少佐の様に。また、地球上に広がる宇宙に等しい深海へイルカの導きで、恋人ジョアンナを地上に残したまま、泳ぎ去る「グラン・ブルー」のジャック・マイヨールの様に。絶望をそこに沈め、自身を大きな闇の広がりに帰属させようって心が傾いても仕方なかろうと、グレースが飛ばされた経緯から推し量ってしまう。

グレースが「地球外に送り出される」以前に、作戦決行前のクルーへの慰安と士気高揚の為にパーティーが模様されるも。チーム結成当初から随行している者達の中には、互いに気心通じ合って、数組カップリングが出来上がったりして催しの主旨を享受しムードが醸成されている中、ご意見番的に途中参加のグレースは、その場に置きどころ無く。独りを持て余していた。

それを見て取った、彼を強権発揮して招き入れた、統括責任者であるクールビューティーな容貌のザンドラ・ヒューラーさんが、職責からも普段はしなさそうなカラオケを率先して歌って、多くの参加者もその様子に沸くのだけれど。

グレースに対して、無理やりに計画に組み入れてしまった贖罪の気持ちから、幾らかでも慰めてあげたくてマイクを進んで握ったのかなと。それを経て、互いの想いが加速するとか安易に傾かない分、印象強かった場面ですが。その後の「展開」から、なおさら抑制が効果的に写る。

以前、映画化された本作の原作者アンディ・ウィアーの「オデッセイ」も、火星探査で取り残された宇宙探査者のマット・デイモンが、地球帰還の本望成就のため強い気持ちと蓄えた知恵を活かす、これからの将来訪れる世界を知恵で生き抜く人の折れない意志を描いておりましたが、本作は、映像の構成や引き立てる効果もあって、それを更に確信的に打ち出しております。

そこには、グレースと同じ任務を持ち、同等かそれ以上の科学的知識を持ち合わせるロッキーの存在が確固と在ったのだ。お陰で「苦境」に決して己を失う事なく、切り開く「筋力」を鍛え発揮出来たのです。異星人との共闘段階を踏むパターンは、マレだったですが。初期段階の「交流」段階は、過去作が幾つかあって。それ以外のカルチャー、特に映像・音楽関係が存亡危機解明及び探査結果送り出し対応で「お遊び」的に用いられて、緩急のアクセントにもなっている。他の船員が宇宙空間用に持ち出した、輸液パック入りのウオッカが、グレースの宇宙独りぼっちの状況を受け入れるのに大きく役立ったというのも、この世界観を理解するポイントにもなっていた。

出演作全作は見ていないけれど、直前の「フォールガイ」とか、私が最初に出逢った「ナイス・ガイ」、前の前のオスカー最優秀助演男優賞をゲットしそこなった「バービー」での添え者人形ケン役とか、外見はグッとルッキングなのに、愛情が空回りとか溢れすぎていて報われない役の印象が強いところ。「バービー」以外は、興行的にも報われない作品出演を重ねていたライアン・コズリングさんですが。(「バービー」も我が国では、振るわなかったけど)やっと、興行と作品評価の両方、名実ともに報われて。よくぞ、折れる事なく演者としての筋力を蓄えられました。密かにこの日を願ったものの1人として、喜ばしいな。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネマサンシャインららぽーと沼津 シネマ6(ビスタビジョン・字幕版)にて


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