mixiユーザー(id:20808806)

2025年12月14日22:38

90 view

「ナイトフラワー」を見て。〜景子の夢は夜じゃなくても開く。表面の危うさが、その行いの是非をも放り投げてくれるお陰で〜

今年見て来た、貧困・格差や対人関係の間の孤立、ハラスメントに断ち難い毒親問題とかに端を発する世の中の規範から逸脱する違法・犯罪行為を女性主観で見せる米国作品が印象深く。中には痛烈でパンク的だったり、公序良俗を逸脱したりする描写がありつつ。それら作品の「華」には、見る側に刺さる先述の問題に対する作り手の批判や意志表示の「トゲ」が含まれていて。それが受け取の「好み」を分かつところではあるのだけれど、私には、見終わっても後を引くものが多かったりする。

劇場予告やTVスポットで、本作の主人公の1人を演じる北川景子さんが、アブない薬物を売りつけて子供を養うシングルマザーである紹介付けのもと、ノーメイク(と、言ってもお顔の「基礎」の美しさは揺るぎないですけれど)のアップで「子供達に、夢みさせたいねん」って力を籠めて訴える場面がプッシュされて。その場面に至る背景と、非合法な規範的に認められない行為に対して主人公が道義的責任を負うだとか、はたまた制裁を受けたりするだとか、紹介される「場面」の顛末から、作り手は見る側に何をもたらしてくれるのか。その辺りに「目的」を見出して、出掛けたのですが。事前に過っていた「懸念」が、そのまま実感となって、想像を超えた傑作との出会いとはならずでした。

TV局主幹の邦画によく有りがちな製作委員会形式のうえで、オリジナルで映画製作が出来て。過去作「ミッドナイトスワン」以降で監督が打ち立てた信用がそれなりなものだって伺えるところ。登場人物や事件出来事を配し、動かしてストーリー展開を図りテーマを深めてくのは今さら判り切ってはいるところで。イケナイ薬物購入の買い手の中に、女子大生が居て。彼女が、警官から職務質問されたのを逃げようとして通りがかった車両に轢かれて亡くなる事件が起る。当然、北川景子さんの「商売」が、無事に永続できるものでは無くて、自分や子供達の細やかな生活を脅かすものであるのを知らしめる事となるでしょうし。

もう一つ、女子大生には当然親がいて。母親役が田中麗奈さんです。経済的には、不自由がないのだけれど。夫は、自分がこうして稼いでいるから家庭の事は妻に任せて、子供も含めて関心が無く。冷え切った夫婦関係に成り立つ「家」だから、居心地悪かろう娘は帰らず、友人から小遣いをたかられイケナイ薬まで買わされた果てに悲劇を迎えてしまうという。

母親の在り方として、北川景子さんと作品中並び立つ図式になるのだけれど。片や、夫は不在で、借金と養育で昼夜問わず働かざるを得ず。それで、違法ドラックを売る事の正当化は無理なところ、その具現として扶養に必要な経済力で娘の養育を押し付けられたものの、子供の心は離れて孤独と無力に苛まれている田中麗奈さんが出くわす悲劇があって。

クライムストーリーとしても、家計の豊かさと人間関係や各人が置かれた立場から社会問題を掘り下げるにしても、幾つか母親達が置かれる立場以外にも、「ネタ」は劇中に配してはいるのだけれど。結果的には、一つの家族を「正当化」する事となって。田中麗奈さんが、家族を省みない夫に対して何も出来ず、娘も「悪い道」から導けなかった出来ない女性が「自爆」したのを示唆させて。

キャラクターを演じる立場として、全く見せどころ無く、ただマイナスの印象だけ背負わされた様に受け取れて、お気の毒な感じが拭えない。貧困に喘ぐシングルマザーの為のファンタジーの引き立て役になってしまっている。

タイトルを想起させる鉢植えの植物は、劇中景子さんが掛持ちしているスナックのママが、お金を落としてくれる以外に興味のない常連客からのプレゼントを押し付けられたものです。関西から子供達と逃げて来て、掛持ちする職場の男性経営者からも、彼女にソデにされた腹いせでパワハラされるわ、幼い次男は保育園でお友達を負傷させるわで、男と生活で毎日すり減らしている以外には、長女に夢中になっているバイオリンの習い事をさせたい願いだけで、他に提示されるものは無く。

そんな恵子さんに、ボディーガードを申し出るのが森田望智さんで、女性格闘家役を演じるにあたってデニーロアプローチで体格を変えトレーニングも積んで本作に臨まれて。拳も脚も締め技も使う総合格闘技らしいのだけれど、スクリーンやTVドラマで見かけない事の少ない光石研さんのクズなジムのオーナーの為に風俗でお金を稼ぐも。献身虚しく、研さんがギャンブルでそれを溶かした挙句に飛ばれて。一時は、格闘家の道を閉ざされかけたりする。

望智さんは恵子さんに申し出る前に、風俗で呼ばれたホテルの掃除作業をしている彼女に目を留めていたりしたのだけれど。男に生活や人生をダメにされてる彼女らは、生活のための必要性と、気兼ねしない存在の心地よさから共に過ごす時間が長くなってゆく。望智さんも、すんなりと恵子さんの子供達に受け入れられて、「家族」関係が深まる。

色白なひょろっとした風貌で怪しさはあっても迫力に欠け母性にはナンか引っ掛かりがあるらしいイケナイ薬の元締めにしたって、田中麗奈さんに雇われた警察上がりの探偵にしては拳銃を裏で流して「行い」がヤバイ渋川清彦とか、景子さんの勤務先の名も知れぬ雇い主に、児童手当の前借交渉で尋ねた役場の窓口で絡んでくるお爺さんとか、望智さんのコーチ役の池内博之さん以外、ロクでもない男しか居なくて。景子さんと望智さんが、如何に絆を深めるか。ひょっとしたら「テルマ&ルイーズ」のスーザン・サランドンとジーナ・ローランズに匹敵する存在になるんじゃないかって淡い期待もあったのだけれど。

望智さんが、恵子さんと同じ髪の色に染めるのと、望智さんの悲願のタイトルマッチ戦で、チャンピオンに押され防戦一方となった時、客席で彼女の名前を声の限りに叫ぶ景子さんにスイッチ入れて貰って一矢報いるのが精いっぱいの描写で。今年、英国でダガー賞の海外翻訳本賞に輝いた王谷晶さんが書いた「ババガヤの夜」を読んでしまったのもあるけれど、男性監督が、表面なぞって編み出したとしか見做せず、二人に良いところが無かったのも痛い。

アブナイ商売で痛い目を見つつも、不条理な世の中や男たちに一矢報いてスカッとさせるところがあってもと思わざるを得ず。望智さんとは幼馴染的繋がりで夜の世界でしがない仕事をしている佐久間大介クンは、望智さんへの想いを諦め胸の内に収めるどころか、こちらも彼女たちをそんな仕事に引き込んだ為なのか、トカゲの尻尾切りみたいに「落とし前」を独り負わされて。田中麗奈さんと並んで、ただもうお気の毒な役柄。

監督との昔からの「縁」で、過酷な役作りを果たした労と2027年の朝ドラでの飛躍を込めての森田望智さんへの評点だけかなぁ、本作については。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネプラザサントムーン シアター�い砲�

6 6

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2025年12月>
日 月 火 水 木 金 土
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031