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2025年08月17日22:57

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「ChaO」を見て。〜フランスの老舗アニメ映画祭でも魅了した、我が国発香港映画愛原動力の最新人魚姫タイプのロマンス型スピードマシン〜

「この世界の片隅に」以来の仏 アヌシー国際アニメーション映画祭での隼グランプリにあたる審査委員賞の栄誉を賜っての凱旋上映だったけれど。劇場に掛けた時期の巡り合わせの悪さに、配給会社が来月の「宝島」に注力しているのもあって、清々しい客入りで。アヌシーの威光は、日本アカデミー賞並みに興行宣伝に於いては、無力なのが証明されてしまった。

私は、「怪獣の子供」での緻密な画作りで製作スタジオであるSTUDIO4℃を認知したのだけれど。手描きに拘って10万点の作画を9年間の製作期間を容認して完成に漕ぎつけるという、今日の企業経営に於いて、時代錯誤な作り手に優しい企業。手掛けたモチーフが「人魚姫」で、実写やアニメーションで、国籍問わず扱われて来たから年月掛けて古びる事は無いけれど、新味にも欠けるところではある。

それが、いざ、フタを開けてみると、イタリア人気質なタイトル名に反して、舞台は近未来の上海と云いつつ、書き込まれた街角や室内、人物のいで立ちに、道具類エトセトラ。チラチラと目に留まる人物の所作だとか、動きを伴う場面構成に、慣れ親しんだテイストが溢れていて。

今年初め、80年代の全盛期を彷彿とさせた「トワイライト・ウォーリアズ」に出くわしたトピックが御座いましたが、まさか、超大ヒット作の影にすっかり隠れた我が国発信のアニメーションでも、香港映画への「愛着」が詰まった作品をみせられるとは、全くの想定外にして、2025年が更に印象付けられてしまった。

お話の骨子としては、「人魚姫」での、幼少期における運命の出会いの成就に重きが置かれて、愛しい相手に会いたいが為に人魚が声と引き換えに人の姿を手に入れるとか悲壮的なところは排除して、普段は魚そのものではあるけれど、水を得ると人魚の姿に変わる「お約束」のうえに、人間と人魚族が交流を始め掛けている設定。冴えない、造船会社勤めの青年ステファンが、一方的に押しかけられた人魚族の姫チャオの結婚を、彼の上司はじめとする周囲の強引な圧もあって、渋々受入れるところから始まる。

ステファンは造船会社で叶えたいプランもあって、政略結婚的とも受け止めていて。とはいえ人間社会では適応外すぎるチャオを受け入れられなかったのだが、彼を思う健気さと時折垣間見える可憐な人魚姿もあってか恋する気持ちも傾くのだけれど。成人女性としては、純真過ぎる彼女から一時心離れる「事件」の谷間に落ちるも、自身の遠ざけていた過去の事故の記憶からの伏線回収をバネに、アニメーションだからこその怒涛の疾走を持って恋愛の障壁に挑むステファンの奮闘が展開する。

前述の近未来の上海が舞台であるうえに、そこに、尾ひれで立って歩く魚と並んで、普通の姿の人も居れば、頭身の人も混在して、見世物小屋のような世界観に暫く慣らされないとならず。しかも、メインストリームから外れた、目が細く、凡そ売れ筋ではない線画でクセの有るキャラが占めているので、ついて行くのも大変なムキも居るかも。でも、背景画を見ているだけでも、切符の価値はあるので、そこは、何とか乗り切ってほしい。

暫く経つと慣れてくるのだが。人間と魚族の仲介の立場の胡散臭い男が、鼻くそをほじった手で、ステファンの肩に擦り付ければ。人魚側とコネを持ちたいハンプティダンプティ然とした造船会社の社長は、手のひら返しで、ステファンに「アニキと呼べ」とか言うし。作り込まれた作画世界に注視していると、展開自体はテンポ良く弛まず進むのだけれど、作品世界に没入している為か、昨今の上映時間からしたら締った90分間ではあるのに。それ以上の長さの体感は、集中の高まりの証拠か。

マスコミを巻くのに、主人公の友人(どことなく、香港スター容貌で描かれている)の発明家が駆るムスタングもどきに同乗し逃亡を手伝ってもらうのだけれど。その際の工事現場際を走り抜ける時、置かれているコーンを整った撥ね方なんか、ホント絵に描いた感じで拍手しそうだったのに加えて、007のボンドカーよろしく、追跡車を振り払う秘密兵器を繰り出すのだけれど。ステファン曰く、「ハイテクなのか、ローテクなのか判らない」とされる仕掛けは、想い出の映画「悪漢探偵」で、サミュエル・ホイが、敵の車を蹴散らしたオモチャに通じていたし。

そして、チャオを追うために、乗船会社から巨大なクルーズ船を拝借して、甲板に立ったステファンが、吹き付ける風にロングコートをたなびかせながら着用するのは、「少林サッカー」で、ビルの屋上に集結した兄弟子たちがサッカー出場の決意を示したときに見せた姿に重なって。

極めつけだったのが、デートでチンピラ二人に絡まれて、守ろうと独り庇って戦ったステファンへの愛情を確信したチャオが、上海の街中の噴水で人魚の姿で、周囲のおばちゃん達もそのメロディーに釣られる「あなたのために」(時季の過ぎた倖田來未の後付け主題歌を推すよりも、チャオの声を担当した山田杏奈さんのこっちの歌をフルで吹き込んでエンドロールにも使えばよかったのに)に合わせて始まる、街角ダンスのシーン。

カップルの名前を足して現れるのは、チャウ・シンチーの英語表記の名前のもじり。だからこその、彼の作品では馴染み深い、唐突な音楽場面かと納得。でも、あっちは、チャオが描く水の軌跡や、街中のネオンの軌跡のような明らかに流麗なシーンは作って見せたりしないけれど。更に、思い出せば、そもそもチャウ・シンチーも「人魚姫」撮っていたしね。

ここまで、入り込んで見られるかは、保証出来ないけれど。できたら、もう少し多くの人達と分かち合える客席で見たかったなと。ともかく素敵な、夏の思い出でした。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネプラザサントムーン シアター�Δ砲�

よろしかったら、「あなたのために」の場面を、宣伝用に編集した公式動画をどうぞ。
↓
https://www.youtube.com/watch?v=29UISMCp3Gc&t=122s
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