コミック・ヒーローの原点と云えば聴こえは良いけれど。目から光線だしたりはすれども、空を飛ぶ以外は力が並外れているくらいで見慣れてしまえば鮮度が落ちてしまう能力に、「揺るぎのない正義」の体現者である故に陰の無いひたすら実直な人格者。ある意味「平板」で面白そうじゃないキャラクターを敢えて取り上げて。
今の時代に放つ新作として、アップデートな味付けも足を引っ張らない程度に留めて。スタジオに期待された旬なクリエイターとしての自身の「趣味」をスパイスにしつつ、古典的なこのヒーローの持ち味だからこその見せ場をきちっと作り上げていた。
ある程度鑑賞歴を積んだ者として、この手の作品を見ていると意識の中で「高いギャラ貰った俳優がラテックス素材の衣装纏ったヒーローショウに、何時までもお付き合いしていて良いのか」って現実に引き戻す意識が働くものだけれど。2時間弱という大作としてはタイトに締めた上映時間で、テンポ良く見せる作り手の技量なればこそ、空駆ける感覚で結末まですっ飛ばす。なので、ヒーローものに出かける抵抗が無い方には、チケット代分のモトは取れると約束します。
大事な映画会社の収入源である「ヒーローもの」の統括を任されてから、その一作目であり自らがメガホンを握ったジェームズ・ガン氏であるけれど、先に記した通りアメコミものは、極力見ない事にしていて。それまで、ライバル方に雇われて撮った3本のシリーズは、好事家ではない一般の映画ファンでも受け入れられていたのは知っておりましたが。あらためて経歴見ると、学校中退してバンド活動した時期もありつつ、低予算映画でヒーローもの的なのも取りながら今の地位に登り詰めたうえに、日本の特撮ものにも精通しているとか。
なんか、音楽好きな点はともかく。我が国でも、独自に磨いた映像センスで名をあげて、自身が馴染んだ過去の作品を公式に手掛けられている方と重なるなと。個人的見解ですが。
大概、この手のアクションものの大作では、作品世界に観客を引き込むための「ツカミ」が用意されているものだけれど。凍てつく雪原風景に、「300年前には、神にも等しい、怪物・異能の者が現れた」(精確な記憶では、ありませんが)から、「3時間前」に至る3を頭とする年数、時間のカウントダウンが終わるやいなや、タイトルロールのヒーローが、ボコボコにされて遥か高い上空から落下して来た、彼の顔のアップが画角に入る。普通は、一般市民の窮地を「異能」を持って救う場面から入るものだけれど。
適度な省略の裏に籠めた創造力と可笑しみによって、テンポが保たれ飛躍がこのジャンルの欠かせない見せ場をより印象付ける。
久々に、肌の白い欧米人がセンターに立つ映画を見た感じもするけれど。スーパーマンの地上での姿であるクラークの恋人で新聞社の同僚であるロイスとも、「インタビュー」という形式で、スーパーマンとしての「対処」が正しかったのかどうか検証する事もあって。単に事故現場での人命救助に当たるだけでなく、国際紛争にも介入していて。この辺りが、現実のまだ解決しない地政学的紛争も想起させるのだけれど。この論争は、スーパーヒーローとしての苦悩でもあり、そこでの迷いが彼の不完全さをみせていると同時に、恋人として互いの至らなさも示していて。この辺りが、単なるコミックものを超えて、普通の観客も作品にのめり込める作り手の資質かも。
70年代のクリストファー・リーブさん主演の「スーパーマン」が、原体験となっております。当時の売りは、彼が空を飛ぶシーンを如何に見せるかに心血が注がれていました。なので、宿敵レックス・ルーサーは、今回も変わりませんが。他には、ちらっと父として姿を見せて高ギャラゲットのマーロン・ブランド氏以外に、コミックらしいキャラクターは出ませんが。今や、デジタル技術で動物を仕立て上げるのは、おちゃのこさいさい。同じ星の生まれで「預かっている」スーパードッグのクリプトはじめ、別組織に雇われている、異能者たちだとか、単に敵だけではなく、スーパーマンの比較対象が増えたお陰で、彼一辺倒にはならず、広がりが生まれている。
そのうえ、スーパーマンの世界ならではの、高層ビルがドミノ倒しになって、逃げる車両があわや潰されかける隙間に飛来した彼が入り込んで救済するだとか見せ場なんかもシッカリとあって。ロイスとの会話にも出た紛争地で追われた子供が、長い棒に括りつけた布のキレハシに「S」の字を書いて掲げて彼を呼ぶのだけれど。あそこの場面が映える語り口も巧いなと感心しつつ、逃げ口の無いガザの子供達も過ったりして。ヒーローものなのに、ちよっと感極まりそうになりました。
「マッドマックス 怒りのデスロード」では、ひたすら虐げられていたニコラス・ホルト君が、歴代の演者にならって頭剃って入魂のレックス・ルーサー役を立派に見せておりました。スーパーマンへのやっかみだけで世界的企業を作るし、ブラックホールを引き起こしてしまう別空間に通じる「どこでもドア」的発明もして。思い込みが発揮する「馬力」に感嘆。そして「pearl パール」で、後に殺人鬼となるヒロインを惑わす色男な映写技師として目に留まったスーパーマン役のデビッド・コレンスウェットさんが、大作のプレッシャーをものともせず、空高く舞い上がる雄姿を映えさせて安心しました。
拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネマサンシャインららぽーと沼津 IMAXシアターにて
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