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2025年04月06日23:01

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「Flow」を見て。〜洪水の流れに命をゆだねる猫を見守っていると、賢さが増す気がしてくる件〜

万人受けを義務付けされて商品化されるディズニー製の作品を現地米国オスカーレースで抜き去って、長編アニメーション最優秀賞の栄誉に浴したラトビア製作の本編。ご覧の通り、黒猫をメインに据えるも、二足歩行をするとか人語を解するとか、作品世界の中で擬人化されておらず。CG化によってほぼ動物に備わった習性や反射・反応行動を場面状況に即した動きを表現したうえに、リアルな鳴き声を被せてセミドキュメンタリー風な展開。

80年代、畑ムツゴロウ氏が、子猫を川に流してお話を仕立てて大当たりさせた作品がありましたけれど。コンプラ時代の今、あの撮影は許されませんね。

横道に逸れました。本作は、猫の目線、行動の先に写る場所や出来事を「成り行き」で見せてゆくのだけれど。森の中の一軒家の二階をその黒猫は根城にしているらしく。そっくりな姿の彫刻が、屋根の高さを超えるも大きなものから、様々なカタチのものが庭には置かれていて。寝起きしている2階もアトリエ風ではあるのだが、人間の気配は無い。

黒猫が地上に降りてテリトリーを気ままに歩いていると、向かう方角から山に自生している動物たちが猫には目もくれず側を駆け抜けていった後から、地表にあるはずのない大水が、岩や木の幹に打ち付けながら濁流となって迫って来て。先の動物たちの後を追うカタチで黒猫も突然の災難から必死逃れる。一旦は、住処の二階に辿り着いてやり過ごすのだが、一向に大水の流入は止まず、黒猫は自分を彫った巨大オブジェの頭の上に追われる。自身の身も流される寸前、帆は残っているもの乗り捨てられた様なボロの小舟が近づいて来て、運よくそこに乗り込むのだが。先客のカピバラを認めるや、距離を取って船での居場所を確保する黒猫。

ここまで、洪水の始まりの「不穏」な感じが差し迫る「危機」へと転じる様子だったり、大水に浮かび、黒猫がのぞきこむ水面のきらめきや反射だったり。人の生活圏は当然大水に呑み込まれてしまっているのだが、たまに船上から見えるのは、水上都市ベネチア風だったり、南米の聖堂風だったり水面から突き出た建物の上部のみで、ある意味ディストピアな情景。動物たちは、輪郭なんか大雑把にカクカクしている事が多く、CG技術の洗練は、キャラ造形には無い。しかし、自然描写は精緻を極める。そして、黒猫はじめ動物たちは、備わった本能や固有の感性で動いている。その間、「人間の存在」は、全くの皆無。洪水の理由も差し出されず、人為的なものは、この作品からは排除されている。

漂う小型の帆船には、流される所々で犬たちや籠に集めたガラクタに執着するメガネザルが乗り込んで来て。上空を舞う、サギのような細い二本足で歩行できる鳥の群れのうち一羽が、誤って船から引き離された黒猫を足で抱えて仲間の元に戻す。空腹から水中に飛び込み小魚を狩る黒猫の眼下には、鯨を思わせる威厳と知性を備えた大魚がゆったりと潜行していて、その巨大さには荘厳な感じが漂う。

大水に漂う舟に集められた動物たちというと、ノアの箱舟も想像されますが。それにしては、動物の種族が限られていて。ボケのメガネザルには、レトリバー風の大型犬(犬チームには、柴犬風のツレも混じっていて。それも私には和み要素)とカピパラの温和動物が突っ込んで、ユーモアも不自然さなく差し込まれる。黒猫は、警戒心もあってか距離を取りがち。と、いう具合で、リアルな鳴き声以外は、動物への観察に根付いた動きだけなのに飽きない小舟の仲間が行先も当然判らず漂う「行状記」は、「地獄の黙示録」の討てと命じられたカーツ大佐がどんな人物かもわからず河を旅するウィラード大尉一行を連想しました。

特に、各動物や、出くわす出来事には人間社会の比喩的な意味は無いのであろうと思われるのだけれど。動物たちがただ水上を流される「無為」な旅で目に留まった出来事を経ての、突然の旅の終焉で黒猫が出くわした事態というのは、人間とか動物とかを超えて、この地球上の自然に、更に飛躍して宇宙で起こる摂理というか、理(ことわり)を現しているんじゃないかと。

アニメーションで巧みにセミドキュメンタリー風に映像を創るなぁと感心していたら、突如として「啓示」を見せつけられて、戦慄に近いものが目から貫いたかの感覚が走りました。単なる物語を見せるのではなくて、作品を通して「哲学」とか簡単に言葉では言い表せないものを視覚で表現を試みた点で、「2001年宇宙の旅」にも連なる。これは、決して大げさな例えではないと確信します。

劇場から出ると、父親と思しき方がスマホで、鑑賞の記録として本作の黒猫の大型ディスプレイと並ぶ小学校高学年と見受けられる女の子を撮ってしましたが。この映画をあの父親は、娘にどう語るのでしょうかねぇ。ともかく、親子には、なかなか貴重な鑑賞であったのは間違いない。

拙文にお付き合い頂き、ありがとう御座います。
ヒューマントラストシネマ 渋谷 シアター1にて。

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