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2025年02月09日23:38

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「室町無頼」を見て。〜疫病も流行り、偉いヒトもあてに出来ない昔と変わらぬ世の中にも通ずる自由人蓮田兵衛が弟子に教えるアウトロー流儀〜

エンタテインメントとして今の嗜好に合わせ企業継続を図る一方で、映画会社として自社の「強み」をこの先の時代へ繋ごうとする意志が伝わって来る。昨年の「十一人の賊軍」から間を置かずに東映が繰り出す時代劇。安易に製作費回収しようと手間の掛からないアオハル恋愛モノや涙腺崩壊を狙ったアザトイ感動話を送り出すのではなく、チャンバラや殺陣の「灯」を守りながら、今を生きる我々に投げかける作品を送ろうという老舗映画会社の気概には、応えねばならないでしょう。

1461年、応仁の乱以前の京の都。飢饉と疫病の蔓延に人身売買と奴隷労働が強いられて、平民はその日を生き抜けるか瀬戸際の暮らしを強いられていた。統治者たちは、民を軽んじて享楽にふけるばかり。剣術の腕と情勢を読み己の立ち位置を見極める機転で世を渡る蓮田兵衛(はすだへいえ)は、行きがかりからその身を譲り受けた歳三を引き連れ、彼の棒術の腕を鍛え上げさせる。

鍛錬の過程で各地から流れて来た与太者たちも含め、兵衛は歳三を手下とする。歳三が棒術の達人となる頃には、民たちの窮状も極まっていた。そして、兵衛は、各地から集まった浪人たちと屈託し、民たちの「一揆」を先導し都に乗り込むのだが。そこには、昔、世を治める夢を語り合った骨皮道賢(ほねかわどうけん)率いる幕府軍が、待ち構えていた。

なかなか舞台となる事のない室町時代が背景で、マゲを結わず纏う衣装も型にハマらず着崩した恰好。武器も、飛び道具には種子島ではなく弓が主流で、金棒なんかも担いでいるし。骨皮の刀の握る部分である塚の頭にはドクロがあしらわれて、特別感を醸しているのも目を引く。立ち回りの劇伴は「荒野の流れ者」であるのを共通項としたのかマカロニウエスタン味付け。戦国や江戸時代を舞台にしたものとは違った作風が、楽しめる。

しかし、舞台となる時代の違いは、冒頭でいきなり喰らわされる。街道沿いに飢えに苦しむ人たちが座り込む脇を幕府の役人に打たれながら役務を強いられた男たちが押す台車や、疫病で亡くなった遺体を積み上げた台車が行きかうのである。

社会の根底を揺さぶる疫病が、まずあって。衆目があるから表だって遊興にくれてはいないが、民を省みているとは言えない行政という図式は、どうしたって今と重なって。明日生きる事も危うい室町の時代を、自由に泳いで渡るかに歳三の眼に映る兵衛であるのだが。目的地への道中、歳三との問答で「お金」と並んで、係る他者との間で育まれる「信用」が世渡りにあたって価値がある事を悟らせる。

これは、世間が悪いから何をしてもいい様に考えガチな今の世の中にあって、アウトロー生活が自由気ままに見えながら、勝手な振る舞いが許されるのではなく責任や人格が問われる事を伝えていて、今の時代に通じるアンサーで気に留まった。

切れ目なく出演作が公開されるお茶の間の人気者である兵衛役の大泉洋氏で、腕に覚えある浪人役として軽さが表立ってしまうのかなと懸念しましたが。端役から主役を担えるまでのステイタスを世渡りの遍歴と考えれば、歳も重ねて歳三役の若手演者に道を説く師匠に相応しかったかな。

夜の一揆を経て夜が明けての蓮田兵衛一派対骨皮道賢軍団の対決に至る手前の幕府の無慈悲さを知らしめて兵衛の怒りのスイッチが入るタイミングとか、主要人物の「肉付け」を果たす脇の人物配置とか、活劇運びの為の脚本も滞りなく。虐げられた人々が立ち上がり反抗に転じるまでの展開と併行して、歳三が兵衛の継承者として棒術の腕を上げ、無頼イズムの薫陶を受けるまでに描写が割かれる。

本人のお顔が判らない位の汚れと髭にまみれた柄本明さんが、尋常じゃない状況に歳三を置いて訓練を付ける描写は、年齢的にジャッキー・チェン初期のコメディカンフー作で爺さんにイビリ的に鍛えられるシュチュエーションを連想してしまうのだけれど。その成果が、骨皮率いる大勢の敵が行き先を塞ぐ大通りで、ワイヤーを使った跳躍を交えて長槍でなぎ倒し幕府の門前まで辿り着くまでをほぼワンシーンで見せるアクション場面で起爆し盛り立てる。

映画全盛期のように、下積みから鍛えた映画会社の看板役者によるケレン味ある殺陣に頼れなくなったけど。長年の製作で蓄積された立ち回りのノウハウに、最新のデジタル技術によるシミュレーションと撮影スタッフの経験に集中講座で叩き込まれた今の役者の体技が結びついて、今の時代に作り得る力の入ったチャンバラ時代劇であります。

ソツのない脚色だったと、思いますが。劇中、骨皮道賢役に配した堤真一さんとの腐れ縁を二人して語るところもありましたが。折角、ベテラン同士相対するのですから、兵衛との丁々発止の内に互いの「無頼感」が伺える演者の技量が発揮される場面がもっと見たかったなと物足りなさも若干有るが、尺を考えると仕方なしか。

道賢と兵衛双方の想い人に松本若菜さんが扮しておりますが、遊女なので弟子の面倒も見るのもアリなのだろう。明日を省みない自暴自棄な男の帰る場所として、「十一人の賊軍」に続いて女性キャストがその役割を担って、荒ぶる話を穏やかに落ち着かせる。今のハリウッドアクションの潮流だと、弓の使い手武田梨奈さんが、オジサンたちを打ち負かしていたかもしれないね。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネプラザサントムーン 劇場��にて

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