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2024年04月21日23:38

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「クラユカバ」を見て。〜探しあてたのか、導かれたのか。怪しくも曳きつける地下世界で、探偵は、おぼろな記憶に行きあたる。〜

年明けに劇場で目にした本作と、「クラメルカガリ」の予告編に惹かれる。今時分、原作に頼らない映像化は、「共有感動」が無い分作る側も見る側も、暗がりを手探りで歩むに等しく手を出し難いのだけれど。反面、広告代理店や、TV局にスポンサーとかの顔色を窺わなくて済む分、湾曲されない作り手の表現が堪能できるのだけれど。製作資金の限りから、その表現には「限界」が付きまとう。

個人製作のパイロット版を元に、寄付で一度製作した作品から、更なる製作資金を募って出来上った本作の尺は、それでも60分を若干超えるもの。特に海外の実写超大作など長ければ長いほど価値ありといわれる中、その1/3に満たないものですし、後で記述する内容からして物足りなさも拭えませんが、先の事情は勿論、あえて曖昧とする事で見る側の想像も働かせる計算がある事を承知してなければ。特に、アニメーションは、作り手が描き手でもある場合が多く、それ故「イメージ」が先行するジャンルなのだから、物語の辻褄だとか、厳しく追及するものじゃぁないのではと。

扇町の歓楽街の一角に、探偵事務所を構える大辻荘太郎は、商売もままならない自堕落な生活を送っていた。ある日、知り合いの記者から、巷で囁かれる「集団失踪」について知る。失踪者とされる写真の中に依頼者を認めた荘太郎は、手がかりを求めて地上から引かれた鉄道を起点に開かれた地下街を縄張りにする武装ギャングも蔓延る地下領域「クラガリ」に潜入する。そこで出逢った装甲列車「鬼の四六三」に搭乗するヨタ者を統率する列車長タンネたちの力を借りた荘太郎は、事件の真相と自身の生立ちに影を落とす「喪失」に向き合う事となる。

監督の塚原重義さんは、この劇場公開で認識したのですが、以前より長く続けられていた自主製作作品から、古き時代の下町風景、しかも横文字が右書き表記の第二次大戦前のびっしりと間口を並べた賑々しさを暖色のセピア調に統一していて。荘太郎が、忍び込む「クラガリ」に広がる、地下社会ながら地表と見紛う活力溢れる街並みだとか、スクリーンへの投影時間でいったら、数分数秒なのに、細かく丁寧な作画。

それらを背景として砲塔を載せた「脚」で歩いて動く車両とか、「クラガリ」に引かれた線路を軋ませ進む装甲列車に小銃等護身武器と云った、イイ歳していても心の内に潜む「おとこの子心」をくすぐる機械や道具設定。それでいて、チラッと映る、居酒屋メニューにクリームソーダとか「食」の描写も細やかに生活感を出して、趣味性だけに尖らないバランスも保たれていて。なにより、一時代前の表装は作り手の拘りとしても、キャラクター造形が、ヘンに「媚び」の為に湾曲されず、先の背景や色調に馴染んで統一されて入り込み易い。

活動写真の弁士に、テキヤや大道芸の腹話術風のからくり人形を使った呼び込みみたいな第三者の「語り口」も用いて、レトロ調の世界観作りは徹底しているうえに、視覚以外からも情報を流して見る者をリードするのだけれど。それは、確かな画作りをもって、魅惑的世界に誘おうにも、冒頭に記した通り「尺」は、限られている。

このストーリーの「推進」的役割である荘太郎と、「集団失踪」の第一容疑対象となるギャング団と、単に欲求を満たすために悪事を働く輩たちとは一線を画す存在の装甲列車の面々のすみ分けが見る方の頭の中では追い付いても、「失踪」の尻尾をつかむ探偵の追及行動としては、真っ向から対峙して「白黒」カタを付ける見せ場がアヤフヤな分、もどかしさが、何処か断ち切れない嫌いがあって。装甲列車のヤサグレ共を統率するタンネは、荘太郎が「クラガリ」に侵入する前の下調べで、古新聞の曲芸団か何かの広告にデカデカと出ていた写真と同じく、銀髪で鬼灯眼をした特異な風貌なので、統率するに至った背景を含めて理解を深めたうえで「集団失踪」事件の解決を見守りたいところなのは、見た人の多くが抱えたであろう実感に違いない。

でも、それは監督自身が痛感している筈で、「集団失踪」の発生場所である「クラガリ」を荘太郎自身の人格形成期の事件と絡めたのは、荘太郎が抗争を潜り抜ける間に、過る肉親や胸を痛めた出来事の断片を去来させて、否応なしに事件に向かい合わざるを得ない、通過体験的な意味合いを背負わされる探偵ものの範疇に、懐古ムードもより高めて魅せる技で収めております。無意識のわだかまりが、捜査を経て解消された事を現すかの、意識下か無意識下だったかアヤフヤながらも、手渡されたネジで、止まっていた時計を再び動かす描写は、まとめとしても、決まっていましたね。

本作の原形時点から、荘太郎の声で起用されていた講談師の神田伯山さんは、インタビューでは、監督と険悪になる程絞られた主旨の談話をされていましたが。出来上がりは、下町育ちのうらぶれ味が滲み出ていて、専業声優さんと全く遜色なく。そして、タンネの補佐役の班長のルックスが、佐藤充さんに寄せられていたり、装甲列車の乗員が、抗争で戦う前に自分たちの生死でサイコロ博打に興じる描写だったり。岡本喜八監督の「独立愚連隊」への愛着が露骨に表現されていて、物足りないとか叱責する要素が御座いません。

更なる探偵 大辻荘太郎の捜査と装甲列車「鬼の四六三」がクラガリを疾走する場面に、タンネと与太者たちの奮闘ぶりを目の当たりに出来る日の到来を密かに願っております。その折には、この原形作品を見られて良かったと、胸の内で独り浸る事でしょう。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネプラザサントムーン 劇場�Г砲�

検証の為、予告動画リンクを貼ります。気が向いたら。
https://www.youtube.com/watch?v=K0mw29Bm1wI&t=5s

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