この作品に出かけるのは、今、望み得る最高の視覚体感ではないでしょうか。そして更に付け加えれば、お近くに最大フォーマットでの上映館があれば、差額料金の負担を惜しむべきではございません。
ロケ撮影を基調として、舞台である惑星アラキスに生息する巨大なサンドワームが、広大な砂中を這い回る生態環境を映し出す視覚効果と、そんな辺境の地を生き延びる緊張が鼓膜を通して増幅されるかの音響効果が、それこそ降りかかってくるかの非日常の空間への没入が待っております。
しかしながら、上映システムの粋はあくまでもお膳立てであって。それらにも頼りつつ、投じられた巨費の製作資金の現われである、実力者達が揃ったキャスティングに、作り物感が全くない見た目と理に適っていそうなコスチュームや小道具といったプロップに衣装やセット美術、それらの礎となる多くの作品に影響を与えた原作からのエッセンスを視覚に落とし込む脚色、キャラクターの心象や見せ場を意識し汲んだ色調や画角の撮影。
どれをとっても一級品の「仕事」が、追い詰められたアトレイティス家の若き世継ぎポールの直面する危機や試練、本作で明らかになる呪うべき血縁と母方からもたらされた特異能力へのとまどいや迷いを経て、まさに身を斬る決断に打ち出るまでの切迫感をもたらす。
創り上げられた世界観による、課せられた運命と個人の愛憎の相剋に、束の間日常から切り離された空間で情感を揺さぶられる。まさにこの上ない映画体験なのですが。我が国の興行状況をみると、感受性がどうも違う方を目指しているのが、なんとも残念。
本作のポールを見て、その姿を重ねたのは、「ゴッドファーザー」のアル・パチーノさんが演じた、コルレオーネ家の三男マイケル。父親想いで、兄二人とは(父親の願いもあったけど)違って、汚れた黒社会とは無縁で無垢だったのに。父の稼業から当然と言えばそうなのだけれど、事態の急変で、自身の手を汚したのを切っ掛けに、手にした「権力」によって自身の愛を手放せねばならなくなって。
宿敵との雌雄を決する前に、ポールが共に窮地をくぐり、自身を受け入れて貰い愛を育んだ先住民のチャニに一言放つのですが。これから待ち受けるポールの運命を思うと、ことさら重く響くのです。
拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネマサンシャインららぽーと沼津 IMAXシアターにて
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