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2024年03月11日23:12

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「愛と哀しみのボレロ」を見て。〜愛とか、「辛み」のボレロ〜

午前十時の映画祭のリーフレットには、過去作を劇場のスクリーンで見る意義を選考委員の方々が訴えているけれど。実際に、「映画祭」の旧作群を引き受ける劇場も、観客からの有難みを感じるよりも、特に若いデジタル世代が価値を見出せず、その上映回数分の実入りが新作よりも少なかったりして映画祭実施を引受たくないなどと敬遠姿勢なのかもしれないので、13回目の午前十時の終り間際に次年度以降の存続に貢献したいのもあって出かける。

元々、この「愛と哀しみのボレロ」初公開時に、気には留まっても見に行けなかったのもあって。見たい新作が、あまり無かっためぐり合わせもあって、出掛けました。

ハイライトシーンのバレエダンサーのジョルジュ・ドン氏が高く跳躍する姿を、宣伝のメインビジュアルに使われていて。ルドルフ・ヌレエフ、グレン・ミラー、ヘルベルト・フォン・カラヤン、そしてエディット・ピアフをモデルとして人物の人生の交差を巧みに綴った大河ドラマを3時間超、堪能した後に、ポスターなどで目に焼き付いている「ボレロ」の舞いで、大々的に幕が閉じるものと、想像を膨らませておりました。

が、エッフェル塔近くに設えた、野外ステージで、冒頭からドン氏は、あの耳慣れたボレロの調べに乗せて、肉体美を見せつけ始めている。まあ、これは、映画の構成である、一度作品が向かう「帰結点」を冒頭に示すものだけれど。

フランスを代表する監督の1人、クロード・ルルーシュ氏が、これまた数々の映画で馴染みの音楽家フランシス・レイとミシェル・ルグランの両巨匠を立てているのです。冒頭でも、掲げられますが、「ありきたりな人生」を、単調な旋律を掛け合わせたボレロの様に、幾つもの人の行き交うところに、その人が負う傷だとか哀しみ、招かれざる人生の転機だとか浮彫になって。その背景には、歴史的、社会的事件や出来事と云った個人の力の及ばないところもあったりするけれど。国籍、世代を跨ぐ人々の生き様を、作品構成から炙り出すという。それを主題の音楽に重ねるところに、この作り手の布陣の意義があるのでしょう。

冒頭、ソ連にドイツ、フランスそして、アメリカで、モデルとなる本人や、親世代の男女の結びつきをテンポ良く見せる第二次大戦前の描写。そして、戦時中、幼い子を抱えた妻と夫が貨車に乗せられアウシュビッツの収容所に送られるパリの駅、時間を経て、ただ独り、生きてパリの駅に降り立つ妻。そのホームの向う側では、捕虜となったドイツ兵が、敗者として別の列車で送還されようとしていた。そして、パリの街では、敵兵の占拠から「解放」されて祝賀ムードに湧く中、アメリカ人作曲家はタクトを振って華やかなメロディーを響かせる一方で、敵兵に取り入ったのを裏切り行為として、同胞から虐げられパリを後にする女性の姿が。

この辺りの、登場人物の入り混じりは、世代がまだ一代に留まって、音楽に乗せた場面展開だとか、何より、知り得る歴史的事実も相まって、充分ついて行けたのですが。

この後、親世代を演じた俳優が、子供の代を演じ。また、フランスにおけるアルジェリア戦争を経て帰還して来た男たちが、先の4大モデルを投影した人物の「舞台」に、どっと、乱入してきて。長丁場の中、人物の判別が、難しくなって来ます。この作品後に製作された、「ディーバ」で、我が心のヒーローとなる、闇のお助けマンのゴロディッシュを軽妙に演じたリシャール・ボーランジェや、トリュフォー監督最後のミューズのファニー・アルダンの若き日の姿も拝見出来るのは良いのですが。正直、このアーティスト達の半生大河ロマンで、果たす、「役割」が、作品の展開が進むと、初見では判別し難くなるのが、勿体ないというか。

検索すると、「完全版」として、5時間近いバージョンが有ったみたいで。3時間も、結構長尺だけれど、下手に端折るよりも、折角だから「休憩時間」をシッカリ間に設けたものを正規版として送り出してほしかったかな。とはいえ、初公開当時は、まだディレクターズカット版が新たな商売となる認識は、芽生えてなかったでしょうし。

クライマックスのボレロの場面は、全世界テレビ中継という体裁で、その人が置かれた立場上その場に駆けつけられなかった方達はブラウン管で見守って、あと、殆どの人達は、出演者、観覧者、そして中継の裏方として皆が集って、ボレロの曲同様、幾多の生き様の悲哀を奏でるのでした。

他の場面でジョルジュ・ドン氏の素晴らしい舞い、つまりは多くの宣伝材料に掲げられている、あのコスチュームを纏ったその場面は、本当、長尺中白眉でありました。ジャンプして、足を交差させる技、アントルシヤって言うのか忘れたけど、第一人者の踊りがシッカリ記録されていて、もっと尺を割いても良かったくらい。でも、公開当時は、バレエの良さは、まだ判ってなかったな。それに関しては、長い事待って正解だったかも。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネマサンシャインららぽーと沼津 シネマ8にて

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