あまり読まれないだろうから、映画で馴染みを持たれている方で原作に手を出されてない方へのお知らせ程度に残します。
去年の2月に劇場で見てから、上の娘が巻数不揃いで買い積んでそのままにしていた原作を譲り受けて、少しずつ買い揃えで追いかけました。映画では、主人公宮本大が、バンドの念願だった、国内ジャズクラブの最高峰「SO BLUE」のステージに10代であがり渾身の演奏を魅せて、独り新たな音、更に開かれたステージを求めてドイツ ミュンヘンへ飛び立ったところまでが描かれました。映画化では省略された、初心者として高校生からテナーサックスを手にして広瀬川の河原で吹き始めた仙台編を含めて原作では10巻まで刊行された国内編。
その後のドイツを起点として、大がカルテットを結成して欧州を巡るBLUE GIANT SUPREME全11巻を経て、再び独りとなった大が、ジャズの本場アメリカを西海岸から、街ごとの音を探りつつ、そしてあらたなメンバーとのめぐり逢いを経て聖地ニューヨークを目指して横断するBLUE GIANT EXPLORER8巻目が、購入当時最新の出版で、旅の終りの9巻目が、23年発売の予告に関わらず、その後のニューヨーク活動編BLUE GIANT MOMENTUM1巻との抱き合わせ発売の為、ずうっと「お預け」状態で。
その間、出だしの仙台編に戻って全巻読み返し。また思い出しては、途中の巻を取り出し読むなど、足踏みが続いていて。現在連載誌で進んでいる、MOMENTUMは読み進めども、単行本で出されている後の話が、埋められる日を指折り数えてまいりました。
夢もとうに失せて、燃えカスの様な心中にくすぶる火を、吹き消される事の無い様に凌いで日々過ごす中年の身には、「世界一のジャズプレイヤーになる」と口にし続けて、欧州や北米でテナーサックスを奏で続ける主人公は、失われつつあるやる気、生命力を感じるし、(高校教育での英語知識しかないのに、全く臆していない)彼に係るプレイヤーたちも勿論ですが、音楽を生業としない、市井の人達との係わりに、生きていくうえでは必要のない音楽の魅力が垣間見えて、「音のしない」漫画であるのにも関わらず、惹き付けられます。
それで、待望の米国横断の旅を締めくくるEXPLORER の9巻目ですが。ここでの山場は、前巻の予告でも謳われていた、東京篇で交通整理のバイト中の不慮の事故により、右手に大けがを負ったピアニスト沢辺雪折(さわべ ゆきのり)との米国ボストンでの再会と彼を迎え入れてのステージ上の演奏である。
プレイヤーの道を諦めボストンのバークリー音大の作曲科に雪折は、入学していて。東京篇での登場の際見せていた通り、左手1本だけで演奏も苦にしておらず。持ち前のアグレッシブさに関わらず、欧州編でのバンド解散の件でもそうだったけれど、大けがで、充分なプレイが出来ない雪折を気遣ってボストンでの再会まで、連絡を入れられなかった大。それだけ、生まれ故郷で組んだピアニストを気にかけているのを察し、おなじピアノマンとして嫉妬もあったのか、雪折から提供して貰ったナンバーの演奏の時、客席から彼をステージに上げて、自身は降りる現バンドメンバーのアントニオ。
三者の思惑が絡む中、演奏が始まるのですが。普段は、「中学生かっ」てほど、迷いが深い大なのに、楽器を手にすると自分にも他者にも妥協しない意地の悪さ、いや真摯さを求めて、激しいソロ演奏のバトンを雪折に引き継がせて。その圧というか熱に促されるようにして、雪折は、利かない右手を鍵盤に向わせるのですが。
映画では、クライマックスの「SO BLUE」でのステージの描写を変更していて。原作上の進行では、このボストンでのステージが、事故後の雪折とのセッションになります。出逢った時は、大に対して「踏み台にする」って、あからさまに上から目線の態度だったのに。これまでの互いの2年間の頑張りを称える演奏で米国大陸横断の旅の終焉を飾ってました。
あぁ、長くなってしまった。
クライマックスも良かったのですが、大の父親の年代の読者としては、8巻目が、ポートランドのコーヒーショップの店長シェリルが、彼を訪ねて、東側のマイアミに遥々飛行機で駆けつけた夜で切れていたもので。
原作では、高校の同級生の三輪さんと「いい雰囲気」まで行きながらも、東京へ単身大が出て来たものの、マメに連絡する事も無くほったらかしで。仙台から上京してきて、女子大生となった三輪さんから、別の好きな人が出来たと告げられ大の恋は、淡くと云うか、当然の帰結を迎えて。それを、バンドの雪折と玉田(EXPLORER第1巻で、免許取得で一時帰国した際に、大は彼と再会してます)に白状する。その際、ボーイズトークで、ミュージシャンとして身を立てる以上、女性と深い仲にならないのは「あり得ない」と二人から責められていた経緯もあって。
ラブアフェアに関しては「凪」だった欧州編を経て、いよいよミュージシャンとして、別の深みを得る機会が訪れるのか、その結末が雪折との再会以前に気がかりでした。たかだかフィクションなのに。8巻で、演奏で迷いが生じていた大が、思っている事を総て理解していたシェリルを逃したら、また暫く「春」は来ないと気を揉んでいたのですが。とりあえずは、「恋の予兆」は、継続進行という形でした。社会人生活が、シェリルの方が長そうだから、彼女の一時の惚れ心で終わらないといいけれど。
原作の単行本では、買い求める付加価値として、巻末にその巻の登場人物が、将来、ビッグになったのであろう、宮本大とのエピソードを語るというテイで、描きおろしが付いていて。
映画版でも、幻のバンド「シャス」を語る関係者の映像として、流用されていました。当然、原作の欧州編以降も継続されていて。最新巻では、いよいよ雪折が、作曲家として大成した彼が盟友を語る様子が描かれてました。シェリルも、初登場した巻末で、語っている。そのエピソードが8巻に出てきましたが。語りの終わり際に、住まいの全景が書き込まれていて。それが、どうも、ニューヨークブルックリンとか、映画で見た建物の記憶に合致して。
それで云うと、同級生の三輪嬢が、当時の逸話を語る様子は描かれていないので、まさかというのも無くはないが。ただ、20歳の身で、「清い」ままってのも、ニューヨークに乗り込んで、あまた居るミュージシャンたちと凌ぎを削って行くのには、「音」に艶ものらず。ずうっと勢いだけの演奏っていうのも疲弊しちゃいそう。
MOMENTUM1巻では、現地の物価高にも手持ち資金を揺るがされ、やっと得た演奏場所も、最低なところで、暫く前途多難な様子ではあるが。欧州では、レコードも出して、ジャズフェスでも最大ステージにも出て。もう1年くらい、欧州で活動していたら良かったのに。レコード会社とか、コネも出来上がっていたから、ニューヨークで、そのカード切ったりしないのか。とにかく、世界一のプレイヤーへの道は、まだまだ険しい。
前置きとは裏腹に、結局長くなった。まあ、これこそ自己満足だから、目くじら立てられないか。お付き合い頂いていらしたら、感謝申し上げます。
参照:下記は、Explorer9巻で、雪折が大のバンドに贈ったナンバーが、こうなんじゃないかって上原ひとみさんとは別のミュージシャンが書いて演奏した曲に、漫画での雪折を迎え入れたバンドの演奏風景に、回想風に、仙台編からの足跡を挟んだ創作動画です。
https://www.youtube.com/watch?v=SXpUvhnT0ao
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