コロナ禍が収まりかけて、海外スターの行き来も容易となって、暑い夏と共に劇場もかき入れで熱くなるかと思いきや米国のWストの冷や水を掛けられ、映画館の商機も思ったようには盛り上がらず。配信サイトに囲われた名匠の作品が、配信前哨戦で短期間劇場に掛かって、劇場用作品と配信用の「境」を付ける意義が、いよいよ曖昧になって来ましたし。
見ない人よりは見ているとは思うも、手堅い作品選択となり勝ちですが。そんな中でも、フィクション・ノンフィクション、ハリウッド大手・インディペンデント・その他の国製作のものと「広がり」が、前年よりも、ほんの若干でも広がったかなと。
毎年ながらの幅の狭い中からの10本の選出ですが、自分の趣味嗜好と、見た当時の感情の高まりに、客観的な評価目線と、対外的な公表を踏まえての体裁を踏まえてデザインしてみました。こじつけると、これら10本を流れるのは「映画」体験なのかな。
それでは、恒例のカウントダウン形式で記しますので、よろしければお目通しを。
(なお選出10作品と、泣く泣く振り落とさせて頂いた数本の詳細な所感は、総て過去の日記に1本ずつ独立してあげております。)
��デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイ・ドリーム
後付けで「彼」の経歴は何となく捉えていた。愛着は、80年代に手掛けた映画主題歌から始まって。あらためてIMAXの大画面を通して、多様性を踏まえた表現や、ベルリンの壁崩壊の機運醸成と、時代の移り変わりも踏まえた彼の「旅」の体感の末に、それまで彼が閉じ籠った内面的世界から、岩戸を開いて表舞台に出て来たその瞬間。トンネルを抜け出た「歓喜」を分かち合うかの「Let‘s Dance」のイントロが響いた瞬間、鳥肌が立ちました。
��エンドロールのつづき
あのコテコテ映像表現様式の映画大国インド作品群から入って、世界各国の映画群へこの監督が目を向けるようになったかは、見る限りは分からなかったけど。映画と映画館を巡る実体験を描いて、「力ずく」な部分も、「一途な思い」と受けとれて。「映画の魂は、生活に宿る」をカタチにした、あのショットも好ましい。
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ほぼ「この手」のものには、なびかないとはいえ。80年代末のМ.キートンの低音のバットマン名乗り、スーツ姿と身のこなしに惹かれた身としては帰還に応えぬ訳には。時間旅行ものの秀作としてデキは勿論、その典型の「バックトゥザフューチャー」の製作ネタの取り込みはもとより、自社ワーナー製作のヒーロー作品への敬愛があって、実現しなかったあの作品まであった事にして、その本気度に頭が下がった。
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特報と違わず、「2001年宇宙の旅」の人類の前に出現したモノリスを引用するに相応しい女性の美しさも崇め奉るのもはばかって。ケンら脇役男人形どもが、信奉した80年代マッチョ男優も、カッコばかりが先走ってどこか心もとない。売れスジ狙いながらも、主演も兼ねる美形アクターと演者出身の才女監督は、世にモノを問う気概も忘れず。
�Ε�ンフースタントマン 龍虎武師
映画への扉が開かれた頃親しんだ、このジャンル作品の「ザッツエンタテインメント」名場面集とその裏話部分から全盛期へ時間移動に胸熱くして。返還から現在に至る撮影所付近の有様とかって栄華を極めた武師たちの現在地に、香港映画界の現状、ひいては大陸支配の影響が伺えて哀しみと寂しさが募る。
�ゥ┘屮螢轡鵐亜Ε┘屮螢ΕД◆Ε�ール・アット・ワンス
その香港製活劇を支えた1人にして、太平洋を渡ってアクションに於いて女性をお飾り・護られる存在から闘う存在に引き上げた功労者ミシェル・ヨーさんのキャリアへのリスペクトが作品の根底にあって。混沌を引き起こすマルチバース展開は、主役演者の多彩な演技ステージを用意して見せ方の多面性を引き出したうえに、現代アジア系移民女性の半生記として収束し余韻をもたらす。映像が、多次元的芸術表現である事をしみじみ実感。
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「雨に唄えば」と同様、無声映画サイレントから、発声映画トーキー移行直後の頃が作品の背景。新方式で揺れる映画界のドタバタを背景にした聖林ロマンスと違って、権力を盾にオンナを食物にする男性プロデューサーの殺人事件をネタに、成功を追い求める若さ故の勢いと年輪ならではの狡猾さで、若い二人と年配者一人の女性が欲に忠実に生きるさまがフランス風。多作な巨匠が魅せる、軽妙さが心地よいクライムコメディ。
��Pearl パール
「風と共に去りぬ」のテクニカラーの文芸大河ドラマ調に幕は上がれど、実は、普通は見送るシリアルキラーもので、前作を見ずして3部作の2作目。1作目の成人映画製作現場から、無声映画の頃に遡るもフィルムには公には見せられない「欲望」が残され流通した裏歴史検証の筋が通って。コロナならぬスペイン風邪蔓延を背景に、毒親と嫉妬妬みに駆られて「非人道」へ舵を切った、ミア・ゴス嬢が、作品の帰結を背負っての長回し演技は必見。
�▲侫Дぅ屮襯泪鵐�
巨匠スピルバーグ氏の輝けるキャリアと共に、自身の鑑賞歴を歩んでまいりました。巨匠ご自身が、コロナ謹慎を機に振り返る経歴は、世に出てからの代表作の苦労話なんぞではなく、名もなき自主製作時代。高校時代のイジメへの反抗を通して、見る者を信じ込ませる「映像の特性」を知らしめて。そして、最新作にして、「未知との遭遇」で、学者役に起用した
フランソワ・トリュフォー監督の「隣の女」の狂おしさをお母さんと父の同僚に滲ませる。見どころと新境地もありありと、単なる郷愁で終わってない。
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作品中に引用されていた、独立系映画製作の盟友ジム・ジャームッシュ監督のゾンビ映画を見ても、同僚とカラオケに出かけても、しょうもなくすれ違っても動じないふたり。若くはない男女の飾りのない馴れ初め話なのに、強い余韻。いつ打ち切られてもおかしくない雇用に、終わりの見えない独裁者の侵略、二人が踏み出す明日の道のりは、先が見えないけれど、連れている犬の名前と同じ映画史に残る監督の作品のように、行く先に光は射している。
【オマケ】
普通に、特に心に留まったキャストスタッフへの敬意と感謝を込めた勝手に各賞
・監督賞 アキ・カウリスマキさん (「枯れ葉」 クリエイターの「辞める」詐欺は、
見過ごされるのが、芸術の世界の理。居ない事の
方が、大問題。ウエルカムバック!)
・主演カップル賞 アルマ・ポウスティさん&ユッシ・バタネン(「枯れ葉」 大概、こ
の作品について書くと、不器用な中年カップルとかまとめ上げられて
しまうけれど。そっけなさと映る演技も、役者の行動原理を抑えつけ
られて、あの境地に辿り着くのも容易じゃないかと想像すると共に、
今後、監督作の新しい顔として、気まぐれなアキ氏の創造欲を掻き立
てて貰いたく。)
・女優賞 ミア・ゴス嬢 (「パール」 インディの息子として、約束されていた活躍の
場をフイにしたシャイア・ラブーフと籍を入れていた話を知っ
て更に驚き。役は、ぶっ飛んでいたけど、作品の成立を背負っ
た、役所広司さんの対を張る役の感情の揺らぎを見せるワンシ
ーン演技は、この歳の演技のハイライト)
・自作が想像出来ない他者の監督作での化けっぷり評価賞
デビッド・リンチさん(「フェイブルマンズ」 もう、トント監督作を見なくな
っただけに、久々に姿を見られた感慨だけでなく。アイ
パッチやパイプとかお馴染の小道具もあったとは言え、
照れも覗かせず実在の名監督に成り切って。雇った監督
の青年期を盛り立てに徹して感心しました。)
目に留まった小道具と場所
・スパイス収納箱 (「エンドロールのつづき」 ベスト10邦画篇と箱ものが並んで
しまったけど。主人公のお母さんが、自宅内に作り付けの台所が
無くて、外にある火を焚く場所で調理をする際、手許に箱を持っ
てきて蓋を開くと、仕切り毎に必要なスパイスがあって。
作品自体には全く関係ないけど、使う人の拘りや家庭の味の素
と考えると、些末な道具が素敵に見えるという他文化への憧
憬。)
・カラオケ酒場(「枯れ葉」 文字ヅラだけでは、何の変哲もなさそうだけど。我が
国のものと違って、歌詞が映像と共に流れるのを写すモニターもなく
て。記憶した歌詞を思い出しながら、その場に居る他のお客さん達に
聴かせるという、お店主催の「のど自慢」大会状態。そこで上手く歌
えれば、そりゃぁ自慢したって良いわなぁ。行くとしたら、クレイジ
ーケンバンドの「ハワイの夜」を覚えて乗り込むか。日本語の歌、大
丈夫そうだったし。)
くだらないので、この位にしておきます。今年も、皆様に良い映画との出会いが御座いま
すように。拝読、ありがとうございました。
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