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2023年07月23日22:42

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「君たちはどう生きるか」を見て。〜錆びつき無縁の手練と枯れない意欲に身を任せよ〜

それこそ、年寄りの説教にも受け取られ兼ねないタイトルで、引退宣言を撤回した巨匠の作品だから出掛けましたが。でも題名を最初一見した時「上段からの物言い」の印象は拭えない。

吉野源三郎氏による同名の著作は、本屋に行くたび平積みにされた表紙が視界に入って。丸メガネの少年が歯を食いしばり上眼遣いで見据えた表紙絵から、手にも取らずに丁稚奉公の商人成長モノかと決めつけてだけど。その著作名を借りた本作は、第二次世界大戦下のいつ命が絶えても不思議はなかった我が国が、舞台である。

冒頭の夜間空襲の場面で、主人公の眞人(まひと)少年が、入院している母の身を案じて救助と避難でごった返す雑踏を人の流れに逆らって走る切迫感溢れる場面から、疎開の田舎に眞人が、父親と共に汽車で降り立つ場面に切替わる。

待ち受けるのは、父親が新たに妻に迎えた女性なのだが、そのひとは母親の妹で、経営する軍事工場に向かう父と別れて、初めて会った新しい母親と並んで人力車に乗せられた眞人は、いきなり隣合わせの方の手を彼女に取られるや否や、彼女のお腹に手のひらを当てさせられて、父の子供を宿している事を、いきなり告げられる。

空襲を巡る状況描写は、自身の安全よりも、母の無事が先立って居てもたってもいられない心境が先立って疾走する様と、爆撃が起こす火災に、周囲が段々と取り込まれるかの省略を効かせたイメージ画の切り替えから、戦時下、死と隣り合わせの生活を送っている事が、手練れた技ならではの見せ方で、10年のブランクなどものともせず。

続く、疎開地での、新しい母が、眞人に彼と父親との「つながりの証し」を、手のひらを通して知らしめようとする件は、描写自体は一見親子にとって何て事のない家族の風景なのかもしれないけれど、直接的描写を外しながらも、男女の営みを想起させて。こういう、生身を感じさせる描写は、前までのフィルモグラフィーからは思い当たらず、「新味」を感じました。

キャラクター造詣に、代表作を想起させたりとか、懐かしい手触りもあるけれど、疎開先で、「イイ子」で居ようとする裏側に、戦争という成長には異常な「状況」だからこそだけれど、思春期に有りがちのとまどいの上に、生(性)の渇望への「目覚め」とか、全世代に見せる表装ではありながら、ある意味生々しさを湛えているあたりも、引退宣言を撤回して製作に戻った動機かもと、勝手に想像したりもしますが。

唯一の宣伝媒体に描かれたサギが、疎開先の「邸宅」に舞い降りて、眞人を大祖父の建てた洋館へと誘い込むまでの作品中に張られる、神秘性というか緊張感に満ちたところなど、気の引き方は、さすがでした。

張りつめた糸を切って、場所も時間も超越した場面展開となる折り返し以降は、情報過多で、先に書いた様な、センシティブな描写が潜めるうえに、大祖父の大邸宅に囲った「知」の継承とか、散りばめられたモチーフが消化しきれなかったのだけれど。あらためて、アニメーション表現の世界に舞い戻った巨匠の意欲の渦に、まず身を委ねては如何でしょうか。思い返せば、幾つかの「気づき」を与えてくれる。

影響を受けた著作の題名を、そのまま映像に拝した意義なのであろう、時に口汚く相手を罵ろうとも、何処かで相手の存在を気に留めるアオサギの様な「友」を得る事こそ、思い悩む事の多い人生に有意義であるのは、支離滅裂にも取られる後半の描写にあって、そっと忍ばされているのは伝わりました。

過去作で馴染みだったり、初登場の有名どころや、演技経験の薄けど名のある方だとか、声のキャストは、さすが巨匠の「ネームバリュー」を感じるうえに、エンドロールでも、役名が付されて無いので、見終わって、照らし合わせる楽しみもあったりします。実写ではあまり振られない、意外な役を務めている方もいらっしゃって、演者の表現でも楽しめました。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
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