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2023年04月19日23:49

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「デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム」を見て。〜チェンジィズ(数々の変貌)こそ、ボウィの旅〜

ハイスペックな劇場装置での再生に相応しい映像と音響で、発表当時の時代の空気を象徴して今なお輝きを放つナンバーの数々を堪能出来るも、単なるコンサート映像の垂れ流しとは異なる。

これまでにも実在の人物のドキュメンタリーを手掛けた実績のあるブレッド・モーゲン氏が、故人の「権利」を保有する財団からアクセス権を託されて紡ぎ出された本編は、ボウィのファン、信奉者にとっては活動の足跡が満遍なく網羅されて、各人が本作へ思い描く期待を満たしてくれるのは間違いない。

故人のドキュメンタリーと云うと、ゆかりの方の証言で、見る方もモデルの人となりを受けて各自の脳内に仕立て上げて。それを客観視する事で、人物像の補正をしたりするものだけど。本作は、膨大なアーカイブから監督が抽出している前提はあるのだが、活動の実績に即したボウィのモノローグが挟み込まれる。「本人主観」によって、見るものが周知の事実も、初めて目に映る作品や事実も、見る側は追体感して行く。

抽出された映像は目まぐるしいほどに網羅され、抽出過程はさぞかし苦労したのではと、想像もされますが。素材によって画質とかバラツキもあっただろうけど、作品の頭からつま先までビジュアルの統一感があって、主要ナンバーのパフォーマンスでのサウンドも良く、響いていました。

アーティスト活動の箔付として「売り」にも出来たところを、門外不出とした自ら筆を執った油絵も本編の中でチラッと垣間見えたし。そういえば、宝焼酎のCМも出ていたなって遠い記憶にも触れるその前には、必然で流れ着いた関西で運悪く「滞在」をキャッチされて、TVの「ヤングオーオー」に担ぎ出された際のインタビュー映像があって。当時記事では読んでいた、英国での舞台出演で、「エレファントマン」のタイトルロールを演じた際の舞台でのスナップに演技音声も挿入もあったりして。ボウィヒストリーが、これでもかと詰め込まれて、一回の鑑賞では情報の消化が追い付かない。

それでも、気を散らすことなく映像に向かえるのは、音楽だけに縛られない「表現」の試みも、それによって移り変わる居所も、ボウィ本人の語りに沿って、時間軸と共に内面も含めたボウィ自身の変貌を、ある種の「旅」として捉えられるから。ただし、私の場合は、彼が傾倒した思想や著作に疎いので、完璧に掴んだとは、行かなかったが。

「(音楽の世界に入る前)大冒険をしてやろう」と、心に決めて。「ジギー・スターダスト」のグラムロックでバリバリの業界を席巻した勢い身を任せていたら、セールス記録も伸びたであろうに。メインストリームに打って出ず、社会や時代の「流れ」を感じつつ己の本心に従って生きるというのは、他者が気になるヒトの気質からしても、冒険に踏み出すくらいの気概を持ち合わせてなければ、なかなかできないものだけど。

でも、そのおかげで、1960年代から70年代を一過性で終わるどころか、表現者としての価値を高め続けて。楽曲「HEROES」が、製作したドイツのコンサートで披露される映像も、本編に織り込まれていて。当時、ドイツには東西に分断する壁があって、それを壊す機運を高めた曲として、つとに知られている訳ですが。音楽自体に、人々や社会を突き動かす「力」があったのが、目に見えて判ったりもする。

本人が意図した以上に楽曲は、大きな存在となるし。思うところがあって、その間気持ちも浮き沈みもありつつ、カリスマといえども、紆余曲折を経ている訳で。見ているこちら側も、シンクロ率が痛く高まっていたところで、1980代初頭に、純粋に音楽を楽しもうと吹っ切れたところで、誰もが耳にした「Let's Dance」をステージで歌うボウィ様が現れたところは、もう、チェンジズ(変貌)の旅を彩るには、最高の構成でした。聴かせる側も、聴く側も、まさに待ち望んでいた、絶妙なタイミングで発表されて。そんなところからも、80年代って、「結実」の時だったのかなと。

ただ、個人的には、ドイツ時代にブライアン・イーノを呼び寄せてレコーディングする風景があったのに対して、「Let's Dance」をプロデュースした、ナイル・ロジャースが、チラリとも垣間見られなかったのが、惜しい。

色々と書きましたが。アーカイブ映像をちりばめたドキュメンタリーですが、エンドロールには、エフェクト担当のスタッフ表記があったりして、何を手掛けたのか判りかねるけど。ひょっとしたら、冒頭と終わりに「月面」を思わせるカットにも、係わっていたりするのか。それは、薄暗く、冷たさも感じられる衛星地表画像の色調だったけど。それとは対照的に、アーカイブ集は、唯一絶対で知性と好奇心の光を放っていて。恐れ多くも、それに触れたいという気にさせる。

まるで、その存在が「2001年宇宙の旅」の石板モノリスを想起させるとでも、思わせたいエフェクト映像のフリだったのか。ともあれ、そんな映像の旅を経ると、ヘタな伝記映画で、恐れ多くも、ボウィさまのコピー演者を据えないで欲しいと、ツトに願うのであった。

拙文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
シネマサンシャインららぽーと沼津 IMAXレーザーにて

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