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2020年01月08日05:38

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詩 『家路』



 家路は暗く 吐く息は白く 夜の墨に 蕩ける

 震え 狂え 街灯は 心細く ポツリポツリと 

 ポツリ 呟く 声は 軋んだ  ぷつり 気持ちは 途切れた

 けれども道は続く どこまでも どこまでも

 生暖かく ポケットの中の手 プツリプツリと鳥肌があわめく

 削るようにあわせる両手 それでも 毛穴が一つ一つ 閉じられていく

 早くたどり着かなければと 焦るけれど

 汗は冷たく冷えて 温もりは止めどなく世界に放散されていく

 

 道のりはいまだ半ば 我が家は 見えない

 溢れ零れる愚痴 口から次々と それが心を重くし 足取りは鈍くなっていく
 
 氷点下の夜 徐々に柔軟さを無くしていく 『それ』

 薄汚れた標識 表面はつるりと滑り 零れ落ちていく 

 それでも歩くしかない。 立ち止まったこの場所には何も無い

 諦めて立ち止まることは進むことよりも どうしてこんなに辛いのか?

 憐憫と怒りの音は 魂の欠片を含んで 星一つ無い 空へと 上がっていく

 

 距離は縮み、時間は進む 終りへと

 ただ一歩二歩。

 そして夜もまた沈み込むように

 明日へと三歩四歩

 終わらせたいのか 終わりたくないのか? 

 問いかける相手もいない。 ただそれだけは恐ろしくとも確実に

 家はまだ見えない。 もしかしたらそこには何も無いのかも

 けれども 進まなければ 何のために?  

 答えの無い答え それでも 棒になった足を 前へ 前へ



 やがて夜は明けた。 夜に熟成された空気が徐々に 朝の香りへと変わっていく。

 気がつけば 家はそこにあった。  
 
 果たしてそれは遠かったのか 近かったのか?

 それでも夜はいずれは明ける。 朝へと形を変えて

 震える身体。 籠を取り出して 家へと変える。

 明日は帰れるだろうか? 

 考える必要はない。 
 
 朝はやがてふわりと燃える夕日に燃やし尽くされて 黒焦げの夜になるのだ。

 終りが来るその日まで。

 そして また あの寒い夜に家路を進むこともまた。     


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