川沿いの国道に面した場所に
小さなアパートが立っている
ANアパートという名前がついている
そこには古い友人が住んでいる
友人は兄弟とそこに住んでいる
友人は貧しかった
生まれつきの病のように貧しかった
ある日 おれは初めて彼のアパートを訪れた
迎えてくれた彼は表情が暗かった
長男がここに帰ってくるらしい
彼は以前家庭内暴力で兄弟の背中にたばこを押しつけていた
友人の兄弟には弟も妹もいた
皆怯えていた
いたたまれず おれは彼の部屋を出た
表に出ると
目のつり上がった派手なジャンパーをきた男がいた
ANの6ってのはどこの部屋か知ってるかと聞いてきた
それが彼の部屋番号だった
おれはANの6は川向かいのアパートだと告げた
そこに行くには土手を越えて川を渡っていかなければならない
おれは近道を知っているのでついて来いと彼に告げた
彼はおれの後をついてきた
そろそろ彼が悪態をつき始める前に
おれは彼を後ろから殴った
土手の身長を越すクマザサの中に彼は倒れた
そのまま首を絞めて 窪地に埋めた
ここに人が来ることは絶対にないと思った
アパートの入り口に戻ると
友人が不審そうな顔をして立っていた
彼に もう兄さんはこないと告げた
泥だらけのおれを見て彼は悟ったようだった
部屋から彼の兄弟が出てきた
皆 説明を求めることもなかった
目が覚めた
クマザサの感触がまだ残っていた
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