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2019年06月28日03:04

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アメリカの反知性主義 1.スプリングスティーンの場合

「よう この人たちはこんな夜中まで何をやっているんだい?」
建築現場で一生の大半を過ごしている友人が聞く
首都高の上から見えるオフィス街は 深夜にもかかわらず寒々と蛍光灯の光が漏れている
「さあ わからん 難しいこと」
そう答えた
彼はこれといった教育を受けたわけではないけれども地頭がいい
答えがわかってて聞いているのも承知していた
「ふうん」
わかってはいるが 承諾はしない
おれは彼がわかっていてもそれを認めないことを知っている気がしていた
恐らくはその理由も


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The River

俺は谷にある街に生まれた
そこでは誰もが
父親がそうしてきたように育てられる
俺とメアリーは高校で出会った
彼女はまだ17歳の頃だ
二人で谷を抜けて
緑の草原までドライブしたもんだ

俺たちは川まで行って
飛び込んで泳いだんだ
川までいって

メアリーに子供ができた
彼女それだけを告げた
俺は19歳の誕生日
労組の組合員証と 結婚式に着る上着を手に入れた
二人だけで役所に行き 手続きを済ませた
結婚式の笑い顔も 教会での式もなく
花も ウェディングドレスもなかった

その夜 二人で川へいった
川に飛び込んで泳いだ
そう 川の中に

ジョンズタウン建設会社に仕事についたが
最近は不況であまり仕事がない
大事なもの全てがそうじゃなかったと消えてしまったようだ
俺は何も覚えていないふりをしている
メアリーは全然気にしてないようなに振舞っている

でもね 兄貴の車を借りて二人でドライブしたことは覚えているんだ
彼女の日焼けした肌は水に濡れ魅力的だった
夜の堤防で 俺は眠れずにいた
彼女の息を感じようと引き寄せたことを覚えている
そんな思い出がよみがえり俺を苦しめる
かなえられなかった夢はみんな嘘だったのか
それともどこかで間違ったのか

おれは川まで行ってしまう
もう川は干上がってしまっているけれども
そんな記憶がおれを川まで連れて行く

彼女と俺の二人を

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何もない田舎町で生まれ
そこで正しい生き方を自分なりに考えていた
妊娠した彼女を妻にし 中絶するなんてことは考えもしなかった
なんとか生活するために真面目に働きもした
そうすれば幸せが保証されるはずだった
でもそうはならなかった
何が間違ってたんだろう?
望みはないのだろうか?

川は一つの信仰の象徴であり
自由と守るべき道徳は誇るべきもののはずだったアメリカの思想だ
この詩の主人公の青年は
直感的に自分が正しい道を選んだと思い続けている
そして もう一つの認めたくはない直感は
これが自由資本主義の成り行きだということを知っている
でもそんなことが
田舎の谷あいの町で生まれた彼にどうしろというのだ?

信仰と自由 もっと言えば自由主義経済
そこにどんな妥協策を見出せば良いのか?
そんなことは彼には関係のない話だ
彼はどうすべきなんだ?

スプリングスティーンはそこを聞いている
何もできないのか?
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