詩『夜の裾を飛び出して』

包まれたかのような暗闇で

触角のようなヘッドライトが進む先に触れている

黒は道の先をすっぽりと覆いつくし

世界を閉じこめている

どこに向かうのか？

どこに行けるのか？

疑問すらもバカバカしくなるほどに先は遠く果てない

頼りなく切り裂かれ、隔たれた数メートルを止まらない車輪は静かに回る

無心で、無言で、無感動に。

無数の部品の相互作用でガソリン燃やして走る音は仕組まれた細胞で儚く薄い羽を震わせて走る虫。

ただ走る。

無為に。

無意味に。

本能という意思だけで蠢く生き物。

時間がその終わりを告げるまで。

やがて夜が裾をひるがえせば

不意に隠されていた朝が見え始めた

それでも進もう

夜の裾から飛び出した羽虫は飛び続ける

光を求めて行けるところまで