mixiユーザー(id:2230131)

2009年09月03日23:28

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ハッピーエンド

いつもの道中に通りすがる、ある一軒家。

小奇麗に庭が手入れされた、こじんまりとした新築の家。
庭を隔てた家の窓にはカーテンが掛かっているが、必ず15cmくらいは隙間が設けられていて、そこから少しだけ室内の様子が窺えるようになっている。
そしておあつらえむけに、その隙間からは焦げ茶色の小型犬(トイ・プードル?)がかわいらしい顔を覗かせている。あるいは友達を作りたがっているような、人懐っこい顔をした犬だった。

3回に1回くらいの割合で、そいつは姿を見せる。
僕はこの犬を見るのがささやかな楽しみになっていたようで、ちょっと遠回りではあるけれど、気付けばこの道ばかり選んで歩くようになっていた。

今日も何気なく犬の姿を探してみる。
すると、いつもは犬がいるはずの場所に、なんと、あのネコがちょこんと座っていたのだ。

忘れもしない…雨が降りしきる丑三つ時の出来事。
車の下にうずくまって泣いてた白いアイツ。
あの夜の光景。
そしてこの家は、ネコの鳴き声が聞こえた場所と近かったことにふと思い当たった。

じっと僕を見上げるネコの目は、あの時の寂しそうな目のままだ。
ひょっとしてこいつは、僕を覚えているのだろうか。

そのとき、いつものトイ・プードルがあいだに割って入きた。信じられないことに、二匹はお互いじゃれあいながら遊んでいる。

もうネコはあの時のように鳴いてはいない。(プードルはキャンキャン鳴いてた)
そして僕はふとこう思った。
あの時に感じた脱力感の意味とは、あるいはこうなることをはじめから分かっていたからだと…。

「拾う」ことを選んだ人間の優しさ。
優しい人間に拾われて、命が繋がった子猫の命運。
そして思いがけぬ友達ができたトイ・プードル。

僕はたしかにこの瞬間、子猫を巡るストーリーに幕が引かれる音を聞いた。
映画では決して味わえない、日常に根差したリアルなハッピーエンド。
エンド・クレジットは流れたけれど、彼らの物語は続いていく。
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