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2016年09月21日20:28

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「水いらず」

読書日記
「水いらず」
サルトル
 作

この短編集は若輩の頃読んだことがあったが、当時この面白さはわからなかった。人物が生き生きとしていて会話も楽しいし、地の文も興をそそる飽きさせない語り口。ストーリーもちょっぴりあって退屈しないように出来ている。これだけ作品自体が面白いものを後年の実存主義の萌芽としてあれこれ関連付けて評価するなんて無意味ではないか。主義があるから小説に価値があるわけではあるまい。むしろなんであんなわけのわからん哲学に生涯を費やしたか。もったいないことだ。

たとえば表題作「水いらず」では、二人の女性の交流とダンナとの別れや復縁をあれやこれや感情に沿って書いてあって、これがいちばん面白い。平凡な人間達の平凡な人生なので妙に過剰な自意識や観念がないのが気持ちいい。こんなふつうの女達をきめ細かくかけるなんて、それこそ理論をあやつるよりよっぽどたいした才能だと思うけど。

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