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2026年10月01日00:01

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これまた“通俗恋愛映画”を思わせる題名のため未見だったケン・ローチの、ストレートな主張が際立つ映画でした。ケン・ローチ監督「やさしくキスをして」(2004)。

とにかくケン・ローチ監督作で手に入る映画があればすべて見ようと思っています。そして、気にしていなかった作品であっても、見てみると実に明快かつ社会問題の論点が手に取るように分かる映画が多い。今回は、パキスタンからイギリスに移住した家族の、イギリスの人々とは違う“家族観”を明確に示した興味深い作品でした。

まず冒頭に女子高校生タハラ(シャバナ・バクーシ、でいいのかな? 写真3)の演説が面白い。池田和正さんという方が、下記のページで詳しく書いておられますから、ぜひご覧ください。
>https://note.com/tamaike1962/n/nb809cdb68fc4
このタハラは、エジンバラ大学でジャーナリズムを勉強したいのですが、父親は“このグラスゴーには4〜5の大学がある。家から通える学校にしろ”と言い張るのでした。

一時が万事、パキスタンから移住したこの一家は家族中心の世界観を持っていて、異教徒との結婚などはもってのほか。長男のカシム(アッタ・ヤクブ)には、会ったこともない従妹を結婚相手に決められていますが、カシムは妹の学校で知り合った音楽の先生ロシーン(エヴァ・バーシッスル、写真2)と意気投合するのでした。

そんな訳で、まさしく“やさしくキスをして”という雰囲気の恋愛劇が積み重ねられ、その前に立ちはだかる家族優先と個人主義の争いなど、恋愛映画なら簡単に解決してしまうだろうと思えるのに、そうは行かないのでした。一方ではアイルランド人の音楽教師は、教師を続けるためにカトリック教会の承認が要る。

教師については、カトリック系の学校ということでカタブツ神父(司祭が正しいの?)の意見に対して、学校側が“君は必要な教師だから契約書にサインしてくれればいい”となるので、さすがに21世紀のイギリスだわいと思いました。でも、パキスタン人はそうじゃないようです。ま、第二次大戦までの日本も、家が結婚を決めてたけどね。

てなわけで、僕なんか父親が反対しようが、“知ったことか”とさっさと結婚して独立した家庭を持ちました。そうは行かない日本人は多いかも。知らんけど。という僕から見ると、なんともはや、残念無念なパキスタンの家族観でした。しかし、そんなものを僕が嫌おうが何しようがなんの役にもたちません。

だからこそ、次女のタハラは“エジンバラ大学へ進学してジャーナリスト”を目指すのでした。カシムだって、DJで成功するつもりで、支援者を探しているのです。そんなときに音楽の先生と知り合い、新しい世界が開けていくのに、なぜ旧態依然たる家族制度を保持しないといけないのか?と、この映画は問題を明確に提示します。

さりとて、簡単に社会観を打ち破って結婚を強行する展開だと、それこそ“ハッピーな夢を追う”商業恋愛映画でしかない。ケン・ローチは眼の前にある障壁を、実にリアルに提示してくれました。つまり、旧態依然たる社会を変えるには、個人が身を持って変えていくしかないのだ、ということです。そういう意味で、僕は幸運だったな。

どう考えても“やさしくキスをして”なんてホザイている場合ではないのですが、羊頭狗肉の題名こそが日本での公開題名の歴史なのでした。ケン・ローチは邦題の意味(そのベタな恋愛感覚)を知ったら、20年早く引退を宣言していたかもね。←嘘やで〜。ケン・ローチは、そんなヤワな監督さんやないからね〜。
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