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2026年09月28日00:12

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アカデミー監督賞を2回も受賞した“名匠”を、不覚にも僕は忘れかけていました。ミロス・フォアマン監督「ブロンドの恋」(1965)。

1965年ごろのチェコ映画というものは、当時の“プラハの春”という事情とともに僕の中に大きな位置を占めています。にもかかわらず、ミロシュ・フォアマン監督の「ブロンドの恋」を、今の今まで見ていなかったことは、僕にとって大きな失態と言わねばなりません。もっとも、この軽い恋愛コメディーを、作品として高く評価はしないけどね。

とはいえ、「カッコーの巣の上で」と「アマデウス」という2作品で、アカデミー監督賞を叙唱している“名匠”です。1960年代なかばに、草月実験映画祭という“運動”が東京で起こり、それを大阪でもやろうという機運が、“映画運動”として起こったのでした。「ブロンドの恋」や「火事だよ!カワイ子ちゃん」(1967)が上映されたはず。

たまたま僕の兄がNHKに勤めていたお陰で1年間イギリスに滞在し、数冊の映画雑誌を持ち帰ったのでした。英語版の「カイエ・デュ・シネマ」とイギリスの「サイト・アンド・サウンド」です。そこに記載された固有名詞、ジャン・マリー・ストラウプやミロシュ・フォアマンはしっかり記憶して、「パパ/ずれてるゥ!」(1971)を劇場で見ました。

そんなフォアマンの名前を、先日「ヴァーサス」というドキュメンタリーで耳にしたしだい。イギリスの左派監督として高名なケン・ローチが、クリス・メンゲスと共に「ブロンドの恋」の画質について褒めていたのです。そしてレンタルDVDに「ブロンドの恋」がありました。レンタルするしかないでしょ(笑)。

つまりケン・ローチという監督さんは、左派思想を持っているから優れているわけではなく、きちんと映画のタッチというものを感じ取っている“優れた映画人”であるからこそ、高く評価されて当然なのだと僕は思う。少なくとも“左派思想”というものは、すべからく芸術の真髄まで極めていないと“成立しない”と言い切ってもいい。

でもって「ブロンドの恋」ですが、国家として生産性の上がってきたチェコスロヴァキアで、女工たちの恋愛問題が囁かれます。いわく、きちんと結婚相手を見つけて仕事を辞めるのならともかく、男ができたというだけで辞職されてはかなわない、という指導部の思いがあるのでした。

でもって、兵士たちを招いて女工たちとの合コン(?)を行い、自由恋愛を楽しんでもらおうという企画が開催されます。友人に彼氏からもらった指輪を見せびらかしていたオードラ(ハナ・ブレイショーヴァ)も参加するけれど、相手がいささか歳上すぎて気が乗らない。でオードラは、演奏しているピアニスト(ウラジミール・プショルト)に色気を見せる。

そしてピアニストの甘言に乗って彼の実家を尋ねるのですが、何も知らない両親はトランクを持って転がり込んだ娘にびっくりする、という展開でした。そんなちょっとした誤解を、クスリと笑わせるコメディーです。あの時代のチェコを思い出さないと、ほとんど意味がない作品だとも言える。

しかし、ケン・ローチがクリス・メンゲスと語ったように、カメラのタッチは独特でした。別にコントラストが効いたシャープな映像ではなく、さりとてアルベール・ラモリスが「白い馬」で見せたきめ細やかな白黒感というものでもない。まさに“ベタな自由恋愛”というものにふさわしい下世話なタッチだと思いました。

ある意味、僕が理想化していた“プラハの春”とは大きく違った、本当の意味での民衆の心の中にあった“プラハの春”は、こういう下世話なタッチだったのではないか、と思います。というか、我々庶民のレベルの恋愛感情って、そんな高貴なものではなくてとことん下世話なものなのだとも言えます。そのリアリズムに拍手!

あの時代の東欧では、10年前にハンガリー内乱が起こり、ラズロ・コバックスとヴィルモス・ジグモントがフランス経由でアメリカに渡りました。同時に、アメリカの富裕層の生まれだったハスケル・ウェクスラーは、そういう連中と手を組もうとした。ケン・ローチもクリス・メンゲスも、“真の連帯”を志したのだと思う。

ということで、難しく考える必要はありません。この映画のほんわかしたタッチをそのまま受け止め、それが「カッコーの巣の上で」と「アマデウス」に代表される“成果”に結びついたという事実を、それぞれの映画を味わうことで“受け継いで”いきましょう。カーク・ダグラスの商売気が、彼らの一助となったのでした。

写真2が“合コン”相手の3人の兵士たち。そして写真3が、パーティーを仕掛けてほくそ笑む指導部のお偉方です。
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