ともすれば、希少となった映画スターであり中でも最高潮の光を放つトム・クルーズ様の危険を省みぬ献身的スタントに圧倒されて見終わりそうなところ。単発の超々打ち上げ花火的に消化されとも可笑しくないのだが。そこに、シッカリ価値付けをする監督・脚本のクリストファー・マッカリー氏のクリエイティブ面でのサポートが、シリーズ「集大成」とされるこの作品では、特に光っておりました。
闇に生まれ闇に死す諜報員ではあるのに、ワールドワイドに目に付く活躍の舞台を展開させる我らがイーサン・ハントは、常に全人類が瀬戸際に追い込まれる危機を脱するために、その瞬間ぎりぎりでその局面まで奮闘するのだが。8作目にして、過去作のカットバックと共に敵役や彼に懐疑的な立場のヤツらから突き付けられる。
予告でも、垣間見せていたけれど。1作目で、主演者の超絶スタントの象徴となった高所から、コンピュータールームの床ギリギリまで寝そべった姿で降下した際に端末デスクに突き立てて残していったナイフが、本作でイーサンの手元に渡されて。それを発見した人のその後の「処遇」からも感傷の気分にも浸りはしても、それを押し殺して、あの背筋をピンとした姿で必死に世界を駆けるイーサン。
ただ、シリーズ最長の上映時間内に3本分に近い切迫度で設けられた土壇場は、イーサン彼独りで切り抜けられるものでは無く。今回も、いつの間にか新メンバーが入ったり、馴染みの人にも寂しいドラマが突如降ってきたりしつつも、イーサンと彼のチームの「連動」が巧くかみ合わないと、即ジ・エンドの状況設定となっていて。スペクタクルでスリリングなうえに、「全人類の命」を安易に賭けてしまう狂人と第三者に評されるイーサンでも、心から「公正な世界」を望む彼に対するグループの面々の信頼と絆を、我々観客も共感しつつ画面に食い入ってしまう。
宣伝のメインビジュアルに使われている、複葉機の翼や梁の鉄線に掴まって、操縦者の持ち物に迫って行くシュチュエーションも、大スターのお顔に掛かる風圧の強さがありありとする程の極限の舞台で、よくぞスタントコーディネートしたものだと、画面に微かに霞んで見える大地に見ている側の足元もすくむ位に臨場感も迫ってきますが。その前の、前作からに渡るラスボスAIの「装置」が格納されている、深海の絶壁に引っかかって沈んでいるロシア潜水艦にトム様が侵入する件も良く出来てました。
さすがに、話の上の深度は潜って無いとは言え、水浸しのセットで奮闘する主役の運動能力があってこそですが。そこに再現された、潜水艦内のミサイルやらが海水に浸かった廃船状態の再現に、インディも手掛けた特撮工房ILМが手掛けたであろう、イーサンの動きで、海溝の淵からさらに引きずりこまれそうな潜水艦の外形の映像の構成は、ほぼ外部ロケで構成される複葉機場面と違う、アクションとセットに編集と意匠が凝らされていて、他所では見られない贅沢かつ手に汗握るシーンで好きです。
1作目から4作目までは、監督も都度変わって。それぞれの作り手による面白味がシリーズのアクセントとなって飽きさせない工夫となっておりました。それが、5作目以降は、マッカリー氏が、主役が見せたいアクションを幹に、物語をアレンジして行く作りに変わりました。それぞれ違った毛色を「統一」すべく、過去作から「ポイント」を拾い上げて、それこそ8作品を串通しするかのアレンジを加えております。
もともと、イーサンって最初から所属するIМFのリーダーではなかったのも、本作のフラッシュバックで思い出して。不正を働いていたリーダーを、蹴落としていたのでした。それで、そのリーダーの「血縁者」を本作に登場させているのですけれど。普通なら、イーサンに対する「怨嗟」、「恨み」とかの感情が行動に現われて良い筈です。売りであるアクション場面も、上述のとおり見ていて力が入るのだけれど。互いに、世界秩序に任を追う者として労を労う場面がさり気なくインサートされていて。話の上でも、この作品に賭ける表現者達に対しても矜持を、キャラクターに乗せて讃えているように映って。マッカリー氏のアイデアは、大味な単発の大作に終わらせずに、シリーズを敬意を込めて各作品の見せ場に筋をとおして、シリーズにさらなる箔を付けました。
トム様には、来年、ディカプリオさんに「レヴェナント」でオスカーをもたらした監督が手掛けた作品が控えていて。その後も、企画を幾つか抱えらっしゃって。ファンを大事にするのも良いのですが。「レインマン」とか「ザ・エージェント」も好きなファンとしては、そろそろ、ご自身で演技を楽しめる作品出演の比重も高めてもらいたいかなと。
拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネマサンシャインららぽーと沼津 IMAXにて。
ログインしてコメントを確認・投稿する