日本製のアニメーションやそれに絡む楽曲が、世界的な受け入れをされているのを目の当たりにするとグローバル化も、グッと身近に思えたりするも。それでも、世はハリウッド主導で、ソフビ人形みたいな3Dモデルキャラを動かすデジタルアニメがメインストリームで、線画表現の本作も一足先に封切られたアメリカでは、波に乗り切れてない様子。
とはいえ、エンドロールで、トルーキンの原作実写版を世に送ったピーター・ジャクソンが後ろ盾で控えた証のプロデューサー名義の表記に続いて、ディレクト バイ ケンジ・カミヤマ(面倒なのでアルファベット綴りしませんが)と流れて、その後も監督を支えた日本の製作会社名とそれに属する参加者名の表記を眺めていると、1人の観客に過ぎませんが誇らしい。
世界的に名の知れた作品のプロジェクトの元、実写版の世界観作りのノウハウを開示されて、それを我国特有の線画の二次元表現に落とし込み実写版の功績に乗っかって世界的に見せられた有益性は次に繋がるでしょう。
本作は、原作本「指輪物語 追補編」にある騎士の国ローハンを治めるヘルム王についての短い記述から、200年後物語の本筋である実写三部作で舞台として登場する領土に言い伝えとして語られる覇王の生涯の傍観者として彼の3人の子供の内ただ一人の王女であったヘラを主人公に据え発想されたインスパイア作品。彼女の幼なじみであり父親の死に関してヘルム王に恨みを抱くウルフの謀略と侵攻に巻き込まれながらも、立ち向かう前日譚となっている。
200年前の時制なので実写化された「本筋」に深く係る人物や出来事が無いので、シリーズ未見の方にも敷居は低いとは言え、「世界観」を揺るがす事なく、このスピンオフは実写へと「流れ」を引き継がねばなりません。冒頭で、ベラの資質や王女として置かれた立場や、父である国王ヘルムが、「二つの塔」で「槌手王」と子孫に語られる由縁を発端として、ウルフの怨念に火が付き領主としての立場を危ぶまれる抗争に至るまで語られる。
実写版で、本の読み手各自が頭の中で想像するしかなかった人や巨大生物が入り乱れる合戦を映像化してしまった特殊効果スタジオWETAの舞台設定をデータで共有して、最後は手描きのアニメーションの体裁に起こされるとはいえ、コンテ起こしから、騎士らの動きのモーションキャプチャーだとかデジタル技術も駆使して。角笛城の城壁を壊し、兵を送りこむ架橋を兼ねた「やぐら」が横倒しになって陣地から掛けられた四角の区枠で囲った渡し道の上を馬に跨ったベラが駆け下りて敵に斬りかかっていく場面とか、「隠し砦の三悪人」を彷彿とさせる活劇描写とか見栄えのする場面。さらに実写テーマ曲のフレーズや、戦車に見立てた巨大マンモスを先陣に立てての進軍の様子とか。この新作で造られた見どころや実写版を彷彿とさせるシュチュエーションも散りばめられて、淀みなく進行して行くのだけれど。「偉大な3部作を壊さない様に収められた感も、無きにしもあらず。」なのが、致し方ないとはいえ、手応えとして残る。あくまで、「指輪物語」に入れ込んでいない者の私見である事として受け取って頂きたし。
私が神山監督の過去作から一目置くのは、ビジュアリストのセンス以上に描写を積み重ねての人物造形や、ジャンルらしからぬ切り口や込められた社会性ある志しにあるのだけれど。敵対するウルフが、復讐の炎を消してしまったら薄っぺらな分、深まらないというか物語に「コク」が立たずにアッサリしてしまったような。
作品世界の枠にハメられてしまった感も拭えなかった半面、監督の本領も伺える爪痕もありました。それは、ヘラの活躍にあります。冒頭、王座に辺境の領主が集められた際、従者が各領主の紋章と名前を照らし合わせる資料を確認している済に、説明の記載が虫食いで欠損となってどこの領主を示すのか判らない紋章があって。詳細は、記憶していないけれど、「戦い手、つまり男が居なくなった領土を救った女性たち」が掲げていたとベラが聞き覚えた事で従者に説明するのだけれど。
父ヘルムには、「娘として幸せを真っ当してほしい」という願いもあって参戦の意思を遠ざけられていたベラだけど。結局は、自身が存在無き「紋章」を掲げていたであろう幻の領主同様に戦わざるを得なくなってしまって。ウルフとの雌雄を決する場には、花嫁衣装で臨むのですが。真冬じゃ無いとは言え、ヒートテックも重ね着出来ずに、ベラ寒くないかしらってアニメ画なのに、どーでも良い事を一瞬過らせましたけど。
実写3部作に描かれる200年後の「未来」が来ても、女王は確か存在しなかった筈で。本作でも、民を統べる柄じゃないって姿勢を見せるも。現代の作品の潮流である、戦うヒロイン像を打ち立てつつも、名の知れぬ「領主」として社会認識で一段下げられて見做される傾向が変わらない今の世を暗に示しているようにも取れて。ともかく、興行的にはもろ手を挙げて受け入れられた訳ではなさそうですが、日本の製作会社が、実写版の製作チームとの交流機会を得られた事で、神山監督も含めて、次のステップに活かせられる事を願っています。
地方では、吹替え版の一択で。ウルフ役吹替えの津田健次郎さんは、相変わらずのクールな悪役で安定感を発揮していて。ベラの声を充てるのは、女優の小芝風花さんで。今年の夏の「ツイスターズ」の吹替え版で、既に津田さんとは相まみえ済。(「ツイスターズ」は、原語版で見ましたけどね)その際、声優の奥義をその際注ぎ込まれたのか、安心して見られました。原語版ですと、実写版ファンには、震える「声」の使用があるようなので、都会の方はそちらもお楽しみに出掛けてみては如何でしょう。
拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネマサンシャインららぽーと沼津 スクリーン6にて
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