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2024年12月16日23:58

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「ザ・バイクライダーズ」を見て。〜我らアメリカの良き時代を過去へと追いやる疾走で行き着くエンドオブロード。そこに待つ者が、喪失を癒す。〜

世界的作品のヒットの強要を課せられない分、製作規模が小さい半面作り手の創意が作品の頭から尻尾まで活かされて。今日、数少なくなった「小品」だけれど、見る人の胸中に体感した意義と味わいを残してくれる。

鑑賞の動機は、「エルヴィス」での鮮烈な印象から我が心の御贔屓リスト入りしているオースティン・バトラーの主演作というのもあるのだが。1965年から73年までのシカゴのバイクライダー集団を収めた映画と同名の写真集に触発されてストーリーを紡いだとニュースで耳にして。ベストセラー小説の映像化なら粗筋に沿わねばならないワクに囚われかねないところだけど。そんな縛りが無い分作り手の創造性が発揮できるうえ、今上り調子の演者の魅力が引き出されるであろうと公開の日を楽しみにしてました。

オースティンさんが扮するのは、65年当時、革ジャンの背中に「ヴァンダルズ」の紋章(カラー)を掲げたバイカー集団に属するベニー。無口で、頭に直ぐ血が上るのか喧嘩っ早いのだが。仲間想いの面がありつつも、集団に属しながらも縛られる事を嫌う。何より、鉄馬に跨り飛ばす事が生き甲斐で、バイクで走る事への執着の強さから行く手を遮る交通法規もハナから気に掛けないため、警察にお世話になる事が絶えず。それ故、ヴァンダルズ内では、カリスマ的存在として一目置かれるのだが、世間から見たら、タダの危険人物。

実の家族よりも、荒くれやら曲者たちの揃うライダー仲間たちを家族同様に思い、たまり場として実質上オーナー的立場で「酒場」を用意する等、見返りはないのにヴァンダルズを切り盛りする事に生き甲斐を見出しているリーダーのジョニーに扮するのは、トム・ハーディー。

2代目マッドマックスが、追われる側の粗暴なバイク集団の長に転身というのも妙なものだが。特にバイク競技に出るとか、意図した単車愛好家の交流を企てるとかでも無く。気分次第でバイクを飛ばす以外は、タバコの紫煙で霞む酒場で酔ってクダを巻いているだけのこの疑似血縁集団をベニーに引き継がせたいと青写真を描いているのだが、当のベニーは、世話になった兄貴の願いを聞き入れるどころか、面倒事はゴメンとばかりトンズラを図って距離を置いてしまう。

そんな、荒くれ共の荒んだ生き方とは別世界に住んでいた、ジョディー・カマーさん扮するキャシーは、そのたまり場である酒場に居た友人に呼ばれて「異世界」を覗いてしまったのだが。偶々そこをベニーの視界に入り込んでしまって。面倒に巻き込まれは御免と、そそくさと自宅に戻ったキャシーを追って来て、自宅の前にバイクを停めて数日間座席に跨ったままタバコをふかしながら佇み続けるベニーに折れて交際することとなったキャシーは、5週間後彼と結婚をする。

ハッキリ言って、ただのストーカー行為に押し切られたのだが、マスクが良いって最高のアドバンテージ。これが、例えばスティーブ・ブシェミさんだったら、速攻、自警団の餌食でしょう。ベニーはキャシーに対して、ほぼ無駄口を叩かず。ベニーとジョニーの間も、「多くを語らずとも、判るだろう」って感じで。何かと口を開いて、ヒトは説明を尽くすものですが、無言の佇まいが放つ「有言」に等しい説得力みたいなものを、今作では、あらためてみせて貰いましたよ。

本作のストーリー展開は、先にあげた写真集を出した著者兼カメラマン役ダニー演じるマイク・ファイストさん(「チャレンジャーズ」のメイン3人のうちの1人だった)が、主にキャシーを中心に「ヴァンダルズ」に係った人達から証言を得る形で進んでいく。

特に、劇中米国の歴史的トピックが挿入されたりしませんけど。第二次大戦後の50年代の景気の良かった頃、同時期に公民権運動があって。本作のヴァンダルズ全盛期の60年代にはベトナム戦争があってヒッピームーブメントなんかも誘発しケネディ暗殺で揺れて70年代に入るとウォーターゲート事件とかで規制の体制が揺らぎ、景気的にも低迷に入っていた訳で。バイク集団の家族があって、家長にあたるジョニーが目を利かせている間は、バイク集団も「家」として確固たる存在を示していたけれど。それ故に大事にされた構成員同士の絆が、目先の快楽や物欲に囚われて誰彼かまわず踏みつける事を厭わなくなった「次世代」の若い人種が現れて。楽しきバイク集団は、単なる集団的抗争、強いては歴史の転換期に飲み込まれて行く。

はたから見たら、危険極まりなかった「ヴァンダルズ」ではあったけれど、その栄枯衰勢の流れには、歴史書には書かれないアメリカの時代や価値観の移り変わりが映し出されている。

そして、この写真集にインスパイアされた本作の構成の巧みさは、「悪い事ばっかりだったけど、今思えば良き思い出だった」と、過ぎ去りし日々の振り返りで終わりかと思いきや。ベニーがキャシーの回想の中から抜け出て来たかのように、ダニーが語る物語上の現在である時制へ戻すタイミングが素晴らしい。

エピソードを聴かせるキャシーの元に長く遠回りした行程を経てたどり着いたベニーの決断は、愛する人に約束された残り半生の「安息」を確信し手放さない覚悟に満ちていて。時代の変革にも、揺るがなかった愛を言葉少なくも表情と佇まいをもってオースティンさんが、我々に突き刺してくるのです。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
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