「午前10時の映画祭」企画での上映により、本作と初めて銀幕での待ちに待った邂逅を果たせて、感無量。去年、一部都市で再上映となった4Kリマスター版の上映権を獲得した配給会社が、「映画祭」に又貸ししてくれたお陰。ありがたや。
80年代半ばでの本邦初公開時から遅れて評判を聴き、VHSテープ、レーザーディスクをブラウン管で再生して、独りや、映画サークル連中と一緒に数回にわたって視聴して来て。気分が落ち込んだ時、自分を振るい立たせたい時など、本作のテーマ曲を脳内再生して、二丁拳銃で、本作の「あの方」宜しく、立ちはだかる相手に銃弾を喰らわせる画を音楽に合わせて創り上げて、心の支えとなる事もしばしば。
それが、音響に特化した劇場って事で300円料金追加となるも、画面はその館の中でも大きい部類で、キャパの割に数少ない客層は、ほぼ同年代のオッサン、オバサンのみで、若い世代への継承とならないのは如何ともし難く、その点のみは、残念。でも、最上級施設での上映で、念願達成にはこれ以上ない環境。
弟キットが社会に出るまで、よくぞヤクザの幹部だって隠して来られたと褒めてあげたい兄ホーが、隠し事がバレて可愛い弟に追われる悪夢にうなされた後には、主役よりも目立ってしまった、ホーの舎弟マーク役のチョウ・ユンファ様の登場。ビル街で、摩天楼の光り輝くテッペンを、サングラス越しに仰ぎ見る、あの黒コートに身を包んだ後ろ姿が大画面に映し出されるや、30年以上の年月を経てのめぐり逢いに、もう、目の前が溢れ出そうな涙で霞んでしまって。
感激の対面から、チョウ様が竹輪の天ぷらを細かく一口大に切った様な屋台食を食していると、後ろ席にホーの乗った黒塗りの車が寄せられて、ドアを開けてホーの隣に座るや唇を拭った指でホーの上唇をなぞるという、オチャラケでありつつ、絆の深さをうかがわせる和みの場面に移って、ひと先ず胸の内の高まりが鎮められたのだった。
ここ最近は、上映2時間越えの長さは当たり前の風潮なので、一時間半で綴られる香港ノワールの本家作品を目の当たりにすると、描写省力の徹底もあってか、物凄く早いテンポに感じるし、売りである銃撃戦の場面も要所のみで固められている印象。まあ、本作のヒットを受けて強引に作った続編の方が、予算は潤沢だったから見せ方もハデだったか。
つまらない事を書き連ねてもしょうも無いので。ともかく、繋がり強い相棒の為には窮地に赴くのも厭わず、絶妙のタイミングで窮地を救いに来た時に見せる頼もしさ。チョウ様が魅せる身のこなし、仕草、表情を銀幕で目に焼くのが第一の目的だったので、十二分に満足。今や、やれ韓流だ、中華だ、ボリウッドだと興味対象は他所に流れてしまいましたが、30数年前に「亜州映帝」の栄誉を冠したほどの明星(スター)でしたから。
そう、「トップガン マーベリック」の時と同様、平凡な暮らしを積み上げて、この上映機会にこぎつけた自分と、この作品後のキャストやスタッフの現在に至る足あとを思うと、また感慨深く。ホー兄さんに反発するキット役のレスリーも、直情的に怒るだけの若気一辺倒のペーペーだったのに。演者としての成熟と胸を痛めるあの事件なんか、思いも寄らなかったし。
弟と舎弟の板挟みになるホー役のティ・ロンさんは、こちらでは見られないだけで、俳優業を続けているらしく。当時は、三人の中では、キャリアを一番積んでいて、まさに作品の「重石」的存在だった。黒社会の顔役の立場を追われ、弟や舎弟からどやされつつ、表社会で何とか「居場所」を見出そうと、香港の街角で藻掻く姿というのは、本作を作った、後にトム・クルーズに香港式アクションの振り付けをさせるジョン・ウー監督と、製作者ツイ・ハークが、映画の世界で芽が出ず台湾に逃れ、香港に出来上がった新興映画会社で巻き返しを図る姿が重ねられて。
本編では、ツイ・ハークは、キットの彼女がチェロ演奏者のオーディションの審査委員長役で、コメディーリリーフ的顔見せだったけど。出所してシャバの生活に馴染もうと苦心しているホーをネチネチと黒社会での再犯に仕向けようと追い詰める台湾の警部役をウー監督自ら演じて、ベテラン俳優のティさんに圧を掛けている。
羽振りが良かった頃に面倒見た若造チンピラ達に追われたホーとマークが、夜景を見渡す山間部の道路に車で逃げ延びた際に、マークがホーを焚きつける際に、「あの街の灯を、俺たちの手に取り戻すんだ」と、声の限りに燻る胸の内をぶつけるのですが。
製作者と監督の心の叫びを、亜州映帝の姿を借りて代弁させた場面に、野心溢れる演者や作り手が割拠して、自由な裁量が保証されて活況を迎えていた香港が、確かにあったと焼き付けられていて。その場面を目の当たりにするのも、劇場体感の目的の二つ目でありました。
願わくは、まあまあのお客が本作に詰めかけて「挽歌�供廚函嶇�/挽歌最終章」も、銀幕でお目に掛かりたかったけれど。でも、その代わりに、やはり去年の後半に都市部で再映された「インファナル・アフェア」が、同じく又貸しで来年度の「午前10時の映画祭」に、ラインナップされるんじゃないかなと、アテにならない予想を立ててみたりして。
拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネマサンシャインららぽーと沼津 シネマ6にて
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