最後の巻

先日、ふと思いついて新版アリストテレス全集のその後の刊行状況をチェックしてみた。すると、第14巻を残して全ての巻が出揃っていた。14巻は『形而上学』である。やはり最後になったかと思う。全集の刊行が始まったのは2013年なので今年はまる十年となる。全集の刊行事業というものは時間のかかるものだ。以前は十年くらい、少し待っていれば向こうから勝手にやってきたものだが、この齢となると来てくれても私のほうが不在となってしまっている可能性もある。

私の気持ちからすると『形而上学』はギリシャ語で読んでいる時、新訳を読みたかった。原語と悪戦苦闘しているからこそ、訳はありがたいし、こうやって訳すのか、と見事な日本語に感心するのだ。今は同書については引退の身である。出ればうれしく購入するだろうが、渇いた喉に麗しい水を求めた私はもういない。

それでも私のAmazonのブックマークは「アリステレス全集」のページなので、発売されればすぐに分かる仕掛けにはなっている。そのページを見ると、価格の表示されていない巻が増えた。新刊書は在庫がなくなり仕方ないのでマーケットプレイスを見ると2万5千円とか2万9千円とかになっている。まだ全巻の刊行が終っていないのになあと残念だ。その一冊を買うお金で旧版アリストテレス全集がまるごと買えるのだが。