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2022年09月03日22:28

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お水の話

二十代のころ、水商売のお勉強のつもりで、歩いて30分程だった新宿によく飲みに行っていた。
酒は二十六くらいでやめているので、それまでの話。
その頃の新宿はけっこう危ないところもある混沌とした街で、向こう見ずな若者には魅力的なところだった。
とにかく、友達と会うというと新宿あたりで「飲もう」ということになる時代だ。
危うさも知っているから、ケガしない程度にその世界を知っておかないと、大ケガするんじゃないかという恐れも抱いていた。
だから、クラブだのパブだのキャバレーだの、歌舞伎町や西口の女の子のいるところから、線路わきのゴキブリ横丁(おもいで横丁)やゴールデン街、風林会館付近の、思い切り治安の悪いところまで、友人のつてなどで、安全そうなところを選んで行って、その世界の話をお伺いして勉強させてもらった。
しかし、一番勉強になったのは、その頃有名になりつつあった二丁目のおかまバーやゲイバーだったかもしれない。
女の子のいるところは、客が気を使って会話しないと話ができないようなところもあるが、きれいな姉ちゃんがいるというだけで客はある程度満足してくれる。
キャバレー王と言われた福富太郎が、客がやたら触ってきて嫌だとというホステスに、膝先を客の膝先にくっつけて話をしろと言ったという。
客は女の子と接触できて、ある程度満足する、体の方は密着しないから、やたら触られるということもない。
これがプロのテクニックだろう。
プロのテクニックはまだまだあるが、とにかく女であることは水商売の武器になる。


それが二丁目ではそうはいかない。
男が好きな連中は色気で引き付けられるだろうが、まだそれ程公然たる存在ではない同性愛者だけでは商売にならない。
珍しがって来るノンケ(異性愛者)やおこげ(おかまにくっついてくる物好きな姉ちゃん)などなども相手にしなくては、高い新宿の家賃が払えない。
そんなに頻繁に行かない私のような客の目から見たら、行くたびに何軒かは潰れ、新しい店ができている。
そんな世界だったのだ。
私が見るに、ゲイバーのマスターたちの最大の武器は話術だった。
とにかく、気をそらさせない。
平気で自虐ネタを出して笑いを取る。
知識が豊富で、知らない話題でも聞く力を発揮して座をしらけさせない。

これは飲食店のマスターが必ず学ぶべきテクニックだと思ったね。
客が一番頭に来るのは放っておかれることだろう。
注文しても、忙しい時にはすぐに出来上がってこない。
そんな時、「すいませんね。どちらから来られたんですか?へぇ〜そんなところから。それじゃ腕によりをかけて、美味しいもの作らなきゃいけませんね」などと話しかけられて話術に乗せられていけば、忙しいのはわかっているから、悪い気はしない。
話が合って、やっと来た注文の品がそこそこの出来だったら、「マスター美味かったよ。また来るね」ということにもなるだろう。
マスターは、手で調理しながら口で相手をするだけで、客に満足感を与えられるのだ。
我々は20代だったから、金はなくとも、禿げたオッサンを相手にするよりはということで、女性ホステスにはモテたと思うが、話術はオバサンホステスにかなわないと思った。
結局、若い色気が褪せてきても、口芸である程度水商売を続けることもできるのだと思った。
とにかく、客を怒らせて帰すようなのは接客業のプロとは言えない。
教師だって接客業。
生徒たちを満足させられなければ、プロとは言えないだろう。

ついでに書いておくと、香川照之の芸能活動を停止させたホステスさん。
誰かから金もらってやったことでなければ、彼女も相当ひどい目にあっていると思う。
客で色と酒が目当てでホステスのいる店に来るなんていうのは当たり前に居て、それを上手くあしらっていい気持ちにさせてお金落させて帰すのがプロの腕なのであって、ハードテクさせてしまうなんて言うのは、二流。
銀座のホステスがそんなことされるようじゃ、店のママも含めて、もっと場末に鞍替えした方がいいんじゃないかと思う。
まして訴訟沙汰にするなんて三流もいいところ。
そのホステスさん、その店どころか、銀座にもいられなくなっているだろう。
まぁ、合ってないんだろうから、かたぎに戻るいいチャンスだったかもしれないが。
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