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2022年02月06日13:40

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「クライ・マッチョ」を見て。〜孫に等しい少年に、持てるものを注ぎ込む事で気が付く。目には映らぬ、老体に秘めた心の強靭さ〜

嘆きを意識から払って国境を超えれば、そこは、ツッパリも利かなくなった老体なりに、生きる気にさせた異国の地だった。

「今こそ、本当の強さの意味を問う」と、チラシやポスターの宣材で、投げ掛けられて。現在の目線で、「わきまえた女性の方が、良い」とか、男尊丸出しの老害を、槍玉にあげるのかとも、発想したりもして。原作が、1975年発行で、映画本編も70年代の設定で、男がガチガチの強さを誇示していても、まだ、異論は挟まれない頃合い。しかしながら、主人公は、老境に差し掛かって、あくまでも、我が身を振り返り、孫に等しい少年の迷いを通して、あらたに生まれ変わろうとする境地が、投影される。

荒くれの馬や牛を乗りこなしてきたロデオスターのマイクは、落馬事故を機に、家族は離散して、競技から身を引いた現在は、種付けだとか、牧場生活で永らえていた。落ちぶれていても、気位は高かったマイクのもとに、元雇い主がやって来て、メキシコ女性との間に生まれ、母の国で生活する彼の息子を、「無断」でアメリカの地に連れて来る仕事を依頼される。マイクは、単身、越境し、息子のラフォを探し出して、雇い主の元へ送ろうと隣国の地をさまようのだが。

ラフォが、連れている闘鶏に「マッチョ」と名付けるほど、彼の「強さ」や、「あるべき姿」を求める気持ちに、マイクが応えて、ロデオライダーのスキルを伝授していくうちに、内に籠っていたマイクの生活に、あらたな風が吹きこまれていた。

くすぶっている老人が、少年を誘拐すると聴くと、荒んだ、破滅の「匂い」がして。そのうえ反面教師的な「悪い行い」を引き合いに、先達から人生訓を学ばされるような、居心地の悪さの想像は、軽くあしらわれる。前の監督兼出演作の「運び屋」と同じく、「老人になっても、女性にほっとかれないんだぜ」アピールも、加担しますが。その後、マイクが、ラフォを連れ出して、追手を巻くべく、身を隠す辺ぴなメキシコの町で、ストレンジャーの二人が、現地の人達を巻き込んで過ごす、つかの間の「休日」というか、思いがけず辿り着いた「楽園」で過ごす描写に辿り着くと、主役が、老人であるのに係わらず、静かな高まりから醸成された活気に、体の末端まで、ゆっくりと満たされる。

ヨタ者を傍にはべらせて、どう見ても公正な手立てで生活していなさそうな母親の元を出て、ラフォは、うらぶれた街の隅でその日暮らしを送っていて。来るべき将来に向けて、自立する「手だて」を欲し、それまでの「後ろ盾」として、自分を省みない母親と違う父親の存在に希望を繋いでいた。何より、今住んでいる、荒廃した土地からアメリカに移れるとなると前のめりになるのも無理はない。そこに現れたのが、夢の隣国を象徴するカウボーイに他ならない、マイクだった。

越境を阻まれて、身を隠した廃れた町にある繁盛には程遠い牧場で、日銭稼ぎで、荒馬の調教を買って出るマイク。昔取った杵柄で、人馴れしてなかった野生馬に、背筋を伸ばして跨り、場内を颯爽と走った。その瞬間、小難しい、知らない老人が、ラフォにとっては、「生き神」に映る。

これは、書き手の乏しい読書の記憶の引用だけど。「得意なものが、何であるかというより、何か得意なものがあるかという事が大切なのだ。」この映画同様、片親から一人息子の保護を依頼された私立探偵が、両親のエゴで、争いのタネとして扱われて、無気力化した少年を独り立ちさせるべく、元ボクサーで、料理もDIYに長けた探偵のスキルを、少年に叩き込むむのだが、少年から拒絶を示された際に、探偵が先に引用した言葉で説く。

若い時に「強さ」を誇示していたのに、気が付けば何も残って居なかったと、我が身を省みて、マイクは、人生経験浅いラフォに明かして。薄々、元雇い主も、純粋にラフォとの生活を望んでいるのではなく、「裏」がある事を察してはいるのだが、自分が、ラフォに出来得る少ない手立てとして、ロデオの経験を教え込み、父親の内情は胸の内に仕舞って、今後は、ラフォ自身の「選択」で、生きて行かねばならない事を、訥々と話して。先の、マッチョが売りの私立探偵と、自立せざるを得ない少年とのやり取りが過る。

そして、ラフォに、今後の彼の人生を生きる手立てを教え込む過程で、絶望のまま、なり行き的に残された時間を、流されて過ごしてきたマイクも、メキシコの辺境で、今の自分を見つめ、再認識し、この先の生きる「意義」を、自らの手で手繰り寄せる。

主役を張る数々の作品を、「一枚看板」として背負って来たマッチョな全盛期と比べれば、当然、肉体も細って、顔には皺が深く刻まれて、どうしても「老い」が目に付いてしまう、監督兼人のイーストウッド御大でありますが。出稼ぎのマカロニウエスタンの頃から、馴染んだ、カウボーイスタイルには、スキが無く。ラフォも欲しがった、ハットを被って馬に跨り、牧場内を周遊する姿は、オーラを放ち、男から見ても惚れ惚れします。

なので、子供を独りで養って、さびれたダイナーを切り盛りする落ち着いた年齢の女性との「新生活」の取っ掛かりを掴むのも当然で、それ故、特に若年層には都合の良い話にしか取れないのだろうけれど。喜びも、挫折も味わって、尚且つその間、イーストウッド作品と過ごしてきた者であれば、見た目は皺くちゃでも、依然として心はマッチョな、イーストウッド御大が見せる「強さ」が、行方の見えない「この先」を、一時だけでも照らしてくれるのです。

拙文にお付き合いいただき、ありがとうございました。
ユナイテッド・シネマ豊洲 3スクリーンにて

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