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2020年11月20日17:16

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お向かいさんの話

お向かいさんに救急車が来て、車付きの担架が運び込まれていた。それから団地の管理担当とかいう人が来て、いつお向かいの爺様を見たかという。少し経つと今度は警察官が来て同じことを尋ねる。私は近所付き合いはまったくない。時々声を掛け合う程度にカミさんは知っているが、今日は出かけていて午後3時頃にならないと戻らない、と答える。

そういえばこの頃お向かいさんのポストが満杯になり新しいものが入らなくなっている。カミさんが心配してブザーを鳴らしても戸を叩いても出てこない。警察に連絡すべきかと思っていた夜に風呂場に電気が着いたので無事らしい。しかし今度は長くその電気がついたままなので、風呂で倒れているのでは、と心配になる。明日そのままなら警察に電話しようと言っていたが、翌朝は消えていて、ただの長湯だったかと一安心した。そんなことをカミさんが言ってました。それはいつですか。一週間くらい前ですか。そんな昔ではなく3,4日くらい前だと思います。

私は聞かれる一方で、爺様がどうなったか知らされていない。彼に何があったんですか。今更何を言っているのか、という顔で答えが返ってくる。亡くなりました。奥さんがお戻りになる頃また電話するか、お話を伺います。その後電話が二度かかってくる。妻はまだ戻っていません。

私は自室に戻りギリシャ語の続きを読む。「それゆえ善であること〔善の本質〕が善なるものでないとすれば、存在者であること〔存在者の本質〕もまた存在者ではなく、一であること〔一の本質〕もまた一ではない」。

カミさんが扉の外で誰かと話しているのが聞こえてくる。そこで警察官が待っていたのか。そうではなく何階か上の奥さんとの会話だった。洗濯物を下に落としてしまったので一緒に行ってほしい、件のお宅のベランダに警察官がいて行きづらいので、と。一緒に行くと、ベランダから窓ガラスを切って内側からの鍵を外して入った跡が見えたという(後で息子に聞いたところでは無線で本部の許可を得るためのやり取りが長く続いていたそうで、かなりの警察官が集結していたらしい。私は見ていないが、隣の爺様はブルーシートに包まれて運ばれて行ったそうだ。

風呂の電気が点いていて翌朝は消えていた、というのがいつなのか、また訊かれそうだ。彼はいつこの世から消えたのか。家族や医師がいないところでの死とはこのようなものなのだ。カミさんによると彼は変わり者でもあり、ブザーを押しても戸を叩いても出てこないことがあった。電気が点きそして消えたことで安心したので、次の日、郵便屋さんだかと一緒に戸を叩いた時も、「また返事もしない」と思ったが警察に電話する必要はないと思ったのだ。それから五日後、不審が重なって誰かが連絡したのだろう。今朝の慌ただしい動きがやってきた。その後、彼の息子さんも駆けつけたらしい。女性の情報収集力はすごい。カミさんに聞いたところでは彼は、血圧を図る姿勢で事切れていたそうだ。

私はご近所の誰とも知り合いではないことを今思う。警察官が問う。ご主人が最後に彼に会ったのはいつでしたか。私は答える。最初から会ってません。いやウォーキングの帰りとかに見かけたことはあったかな…(私は確かに挨拶の言葉をかけたことはあることを思い出す。しっかり笑顔で。しかし相手の顔は浮かばない。私の場合カミさんがいるので生き延びられているが、ご近所的には、孤独老人の一種でしかない。やはり先に行くべきだろう。)


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