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2020年08月19日09:25

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一気に読了! 「京都に女王と呼ばれた作家がいた」 花房観音

いやー面白かったです。
山村美紗さんの小説はこれまで
一冊も読んだことはないけど、
彼女の類まれなキャラクターが
描かれている本作は、人間ドラマとして
とても興味深い。 
 

一日百枚近い原稿を書き続け、年間12冊という
ハイペースで新刊を出し、そのほとんどが売れる
ミステリーの女王は、賞を取っていないことの
コンプレックスもあり、自信と不安に揺れ続ける
繊細な女性だった。 
 
 
隣同士に住んでいた、作家、西村京太郎氏との
パートナーシップ、その邸宅の前のマンションに
住んでいた夫との実生活。
作家として生きるためには、ふたりの男の存在が
どうしても必要だった。
彼女の死後、西村氏は美紗との恋愛を小説にし、
夫は妻の肖像画を描き続ける。
理解の範疇を超えたその関係性に、著者は狂気の
愛を感じ、山村美紗を書きたいと思う。
そして、いくつもの顔を持つ彼女のエピソードを
描いていく。
 

新聞に文芸誌の広告が載ると、定規で測り
自分より大きく掲載された作家がいると
出版社に電話をかけ、そのたびに編集者たちが
銀座千疋屋のメロンや胡蝶蘭を手に京都の家に
謝罪に来た。
その一方で高価なプレゼントを親しい編集者には
欠かさない。
傲慢さと心遣いが共存している。  
      

喘息で苦しんだ少女時代に「いつ死ぬかわからない。
だったら好きに生きよう」と決め、作家になることを
志しミステリーの女王と呼ばれるようになる。
売れに売れても満足できない。
直木賞が死ぬほど欲しかった。
仕事がなくなるのが怖いので、小説の依頼を断れない。
体調が悪化しても書き続け、帝国ホテルのスィート
ルームで執筆中に倒れ亡くなる。
新聞は「戦死」と報じた。 
 

残した遺産、6億7千万。
22年の作家生活で売り上げた本は三千万部を超え、
百本以上がドラマ化された。
けれど今、山村美紗の作品は本屋にない。
著者は言う。
「この本を手にとってくださった方が、京都に生きた
ミステリーの女王が書き続けた本にふれてくださると、
ありがたい」 
  

山村美紗への愛があふれた本作は、
作家という業を抱えた人間の
切なさ、哀しさ、はかなさを深くえぐる。
ぜひ読んで欲しい一冊です。
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