どうしてこんなに著者の小説に
惹かれるのだろう。
読み終わって考えた。
もちろん類まれなるストーリー
展開、磨きこまれたキャラクター、
さまざまがあるが、大きな魅力は
「昭和の香り」が満載なところ。
男たちはみんな傍若無人で、酒好きの
チェーンスモーカー。けれど刑事にしろ
新聞記者にしろ、プロ意識は高い職人気質
といった感じだ。
松本清張の小説や東映ヤクザ映画の匂いと
いえばわかりやすいだろうか。
今作は、結婚詐欺を巡る話で、そこに児童虐待
がからむ。テーマは共依存。
タイトルは、蟻と植物の共依存によって成り立って
いる事象。蟻は樹木の上に巣を作り、植物の果実を
食料にし、植物は蟻の廃棄物を栄養源にして
生きている。どちらが欠けても生きていけない。
決して明るい話ではない。でも柚月の小説は
最後にどこか救いがある。
必死になって生きている人たちへのエールがある。
やっぱりこの作家、只者ではない。
さあ、次は生活保護の闇を描いたミステリー、
「パレードの誤算」を開こう。
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