16、7歳の頃だ。
タバコの煙が立ち込めている
二番館で、やくざ映画とポルノ
が入り乱れての3本、4本立て
をオールナイトでよく観た。
硬い椅子の上でうつらうつらしながら
それでもSEXと暴力シーンには体が反応して
目覚めた。
「仁義なき戦い」「県警対組織暴力」
「仁義の墓場」などなど、スクリーンから
ほとばしるバイオレンス、どうしようもない
男たちの生きざま、死にざまを凝視した。
映画化もされた、柚月裕子のこの代表作には
そんなやくざ映画の匂いがある。
けれどどこか優しい。
この手の映画にありがちな女を食い物にしたり、
男を癒すための存在として描いてないからだろう。
柄は決して良くないが、どこか品がある。
「わしらの役目はのう、ヤクザが堅気に迷惑
かけんよう、目を光らしとることじゃ。
あとは――やりすぎた外道を潰すだけでええ」
主人公の刑事、大上章吾の台詞通り、
彼は清濁併せのむ、ギリギリの捜査で名を馳せる。
タッグを組むのは、大卒の新米刑事。
徹底的なリアリティとひとひねり、ふたひねり
あるストーリーは、読み始めたら止まらない。
著者の本を読んだのはこれで3冊目だが、
今のところ、すべて面白い。
さあ、次は第15回大藪春彦賞を受賞した
「検事の本懐」を開こう。
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