永瀬正敏、樹木希林、名演だったと思う。
ハンセン病が出てくるのだが、この病気について、初めてまともに考えたのは、「砂の器」を見てからだった。
加藤嘉・加藤剛・緒方拳ともに名演で、深い感動を与え、ハンセン病患者への偏見を是正する一助になったとは思うが、あの映画が公開されたころには、ハンセン病に対する偏見が、今以上というか、かなりひどくて、特効薬ができた後でも隔離政策を続けたのは、政府や役人の偏見ということではなく、社会の偏見からの防波堤の意味もあったのではないかと思えるくらいだった。
しかし、「正義は我にあり」と思っている人には、気に入らないことが多かったようだ。
中学時代、一番影響を受けた本を訊ねた時、「いのちの初夜」を挙げている同級生がいた。
その時は、その本がどんな本だかわからなかったのだが、北條民雄が療養所に隔離されたころには、もっと偏見がひどかったのだろうと思う。
同性愛者を「気持ちが悪い」と言い、黒人を「汚い」という。
偏見だとわかっていても是正できない人たちがいる。
理屈でも理論でもない。
「嫌なものは嫌なんだ」と言われて、会話が成立しない。
そんな人たちも生きている社会に、我々は生きているんだということ。
逆の立場に立ってみろとか、そんな人間になりたかったのかとか、いろいろに言えるだろうけど、それでも自分を変えられない人間が生きている社会に、我々は生きている。
そして、たいてい、自分を変えられない人は、そんな自分の重みを、もてあましているように思う。
樹木希林の演じた徳江さんは、亡くなるまでの短い時間に、幸せな体験ができたのだと思う。
そんなことを感じた映画だった。
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