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2017年05月15日22:44

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「支那神話伝説の研究」増補改訂版

「支那神話伝説の研究」増補改訂版  中央公論社 1973年 を拾い読み。
著者、出石誠彦(いずしよしひこ. 明治29(1896)年〜昭和17(1942)年)は、早稲田大学の教授だった人で、働き盛りで亡くなったことを惜しんで、津田左右吉が序を書き、会津八一が題字を書いている。

この時代の人って、原典を白文で読んでいて、かなり覚えているということろがすごいのだが、この人もそうで、読者にもそれを求めているようだ。
従って、返り点は打ってあるが、引用文は書き下しでも現代語訳でもない上に、注釈がほとんどついていない。
だから、例えば「上代支那の「巨鼇負山」説話の由来について」の引用中に出てくる、穆王の行幸中に亀が出てきて王たちを渡したという話も、そもそも穆王が八騎の駿馬を駆って中国はおろか西方まで行って、西王母に逢ったなどという話や、それが『列子』や『竹書紀年』に出てくることなど、知っていて当然という前提がある。
龍子九生の贔屓も当然出てくるのだが、これも、そもそも贔屓が亀に似て、体に重いものを乗せるのを好んだということを知っているのが前提になっている。
内容的には、新機軸というのは無くて、研究史の資料のようなものになるが、引用文には知らないものもあったので、それが楽しみで読んでしまう。

しっかし、未完成みたいな論文ばかりというのは、当人も残念だったのではなかろうか。
こちらも、読みにくいうえに読んでがっかりでは、もう、うっちゃっておこうかと思ってしまったりしようというものだ。

序で書かれていたが、中国人はこうした神話や妖怪の類は、知性ある人の扱うものではないと思っていたようで、あまり研究が進んでいたわけでもない分野だった。
それに業績を残した人として、出石誠彦はもっと注目されてもいい人なのかもしれないと思う。

まぁ、老人の暇つぶしみたいな読書だから、成果なんかはどうでもいいようなものなのだが。
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