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2020年04月29日05:24

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またひとつ“新しい手法”のドキュメンタリーが“開発”された。ピーター・ジャクソン監督「ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド」(2018)。

どういう映画か説明するのに、オールシネマ・オンラインの文章が的確だと思うので引用します。“「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのピーター・ジャクソン監督が、イギリス帝国戦争博物館に所蔵されていた第一次世界大戦の激戦地、西部戦線で撮影された未公開映像を、最新の映像技術を駆使してカラー化し、鮮烈かつリアルに現代に蘇らせた衝撃の戦争ドキュメンタリー”。←“未公開映像”の部分だけは“アーカイヴ映像”にしたほうがいいように思う。

僕はすでにNHK−BSで“カラー化された”と銘打ったドキュメンタリーをいくつか見ているし、マックイーンの「拳銃無宿」というテレビシリーズが10年ほど前にDVD化されたときにカラーライズ版でしたが、僕は違和感なく受け入れられました。昔モノクロテレビしかないころ、「コンバット」という戦争ドラマのタイトルに“in Color”と表示されるのをモノクロで見ていた“くやしさ”が晴らされたような気分でしたから。

この前放送した「カラーでよみがえる大英帝国 エドワード朝時代 1901—1910」で解説していたように、カラーにするとモノクロ画面では分からない、細かい生活情報が見えてきます。つまり子供たちの衣服から生活感が伝わる場合がある。ということで、このピーター・ジャクソンのドキュメンタリーには期待していました。なのに2020年1月に公開したとき劇場に駆けつけなかったのは、あまり熱心に公開情報を調べなかっただけ。

ピーター・ジャクソンは、彼が生まれたときには亡くなっていた祖父が、第一次世界大戦に参加していたことから、戦争博物館が所有する100時間に及ぶ記録映像を全部見て、歴史家たちが所蔵する証言テープ(200人600時間!)の音声を加えて再構成しています。僕の嫌いなノン・ナレーションですが、むしろ迫真性がある。だから何度も言うけど、方法だけを論ずるのはよしましょうね。

驚いたのは、無声映像のはずなのに、インタビュー音声の向こうにガヤが聞こえるのでした。そして時々リップシンクする。これには驚きます。なんでも読唇術の専門家に解読させ、映像の主と同年齢と思われる声優を起用したそうな。インタビューされる人々の回想のリアリティーと、この“あり得ない再現セリフ”のアクチュアリティーが強烈でした。

この映画の原題は「They Shall Not Grow Old」です。それを「彼らは生きていた」とするのは無理があると感じたのですが(“大人になるまで生きられなかった”という意味だと思いました)、19歳の兵士資格に届かない若者たちが多数参加して戦死していった事実を考え合わせて“(カメラがとらえた)彼らは生きていた”という意味だと分かると、納得しました。

カタカナ題名でドキュメンタリーだと、映画ファンもそっぽ向くと思うので、苦肉の策の邦題でしょうけど、だから僕は劇場公開の情報を知らなかった。←こういう映画などは綿密にパブリシティーを徹底して公開するべきなのに、“楽な宣伝”をしようとする輩が多すぎると思う。あ、いや、単に老人のぼやきですよ。今はそんなパブリで動く世の中じゃない。

僕はカラー化したという知識だけは持っていたので、冒頭モノクロ映像だったから“?”でした。おまけにオリバー・ストーンが「JFK」でやったような、シネスコ画面の真ん中にだけ映し出す“記録映画の引用”スタイルでしたから、なおさら。しかしプロローグが過ぎるとビスタサイズのフル画面に広がり、そこに色が加わると圧倒的な“現実感”がありました。

やはり100年以上前のフィルムでも、35ミリの威力はすごいですね。デジタルで取り込んで着色するだけではなく、輪郭などを細部までデジタル補正しているのでしょう。だからインタビューの合間に映像が声優の声とリップシンクすると、ドキッとするほど迫真性がある。この手間は大変だと思うけど、だからこそ再現した映像の力を感じます。まさにフィルムの中の彼らは“生きていた”のでした。

今年になって今まで見た映画の中で、ドキュメンタリーが僕に与えた衝撃は相当なものがあります。数時間に渡るシリーズものの膨大な迫力、あるいは証言処理の巧みさによる新鮮な驚き、そして今回のカラー化と音声付与。いずれも鮮烈に僕の前に現れ、今のところどの劇映画よりも僕の心を動かしました。

ピーター・ジャクソンって、見てくれがマイケル・ムーアと似ていると思ったこともありましたが、ムーアのように自分の見解を押し付けることはないし、この作品についても一切報酬は受け取ってないそうです。←もちろん彼が設立した会社がカラー化やリストア、再現などの作業を正当な報酬で引き受けただろうとは思いますが。

この「彼らは生きていた」は、100分に満たない手ごろな上映時間です。「1917」という作品も、それはそれで見るべきところはありますが、僕にとってはこのドキュメンタリーには敵わないと思います。そもそも比べることが間違っているけど。とにもかくにも、まずこのドキュメンタリーを見てください。それこそ“見なきゃ始まらない”という感じの作品です。
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