去る3月3日、NHKはBS8Kで、70ミリアナログ・ネガフィルムからデジタルリマスターした「2001年宇宙の旅」を8Kで放送しました(したそうです)。僕は残念ながら4Kしか見られないため、この放送は見られませんでした。
そして、ご覧になった方の中でも特に、50年前の初公開時にシネラマ・スクリーンで見たという方にお聞きしたいのです。今回放送した8K画像から、劇場で見た興奮以上のものを感じられたでしょうか?
今回NHKは3月2日に、わざわざ地上波で30分の告知番組を放送していたのです。それを見て僕は、いささか腹が立ちました。テレビ局としては、“ついに映画と並んだ”と言いたいのかもしれません。しかし“8Kは70ミリフィルムと同等の情報を記録できる”と公言していいのか、ということです。おそらくこの番組を作った連中は、70ミリフィルムで上映された映画を見たことがないのではないか?
その証拠として、月面着陸時の基地内部が、細かい窓それぞれに人が動いている、とことさら述べているわけです。僕は初公開のシネラマスクリーンで、そのことは確認しています。それを“キューブリックはここまで作りこんでいた”と、今回発見したような言葉を吐くな、と言いたい。
あるいは無重力トイレの使用法が今回初めて分かったように述べていますが、僕はすでにペーパーバックで「メイキング」本を購入していて、そこに事細かに述べられていました。そんなトリビアは、この映画のマニアなら8Kに頼る必要はないわけです。もし、そういうオタク相手ではなく、一般に広く知らせたかったというのなら、オールドファンの気持ちを逆なでするような言葉を使うな。
この番組によれば、現在のハイビジョン放送は200万画素で、8Kは3300万画素だということです。しかし70ミリ・アナログフィルムは画素という概念なら“無限大”です。それを比べて“同等の情報を記録できる”というのは、真っ赤な嘘でしかない。仮にも公共放送が、どこかの国の大統領みたいな(いやそれ以上の)フェイク・ニュースを流していいのでしょうか。
実は僕は、リバイバル時の70ミリ公開では、月面から見た地球の絵が、もののみごとに書割だと分かって大いに落胆しました。そんな落胆が、今回訂正されるとは思えない。それが懐かしさというオブラートで包み隠せるだろうか。そっちが心配なのです。
もちろん先述の月面着陸時の基地内部にある細かい窓からは、光学合成による微妙なブレをデジタルで修復しているんでしょう。それすら修正していなかったら、デモで見せたフィルム汚れや傷の修正も、単なるデモ用のインチキだと言うしかありません。あんな傷がオリジナルネガにあったとしたら、ワーナーのフィルム倉庫は何を保管しているのか?ということです。
ということで、8Kの放送なんか見れやしないと、僕と同じく臍を噛んだみなさん、少しは溜飲が下がったと思います。もしかして8Kで見ていた人がいて、“お前ら地上波のハイビジョンでしか見てへんかっとたんか。わしらBS8Kやぞ”と威張られたら困るなぁ。そのときはそのとき、その人のほうに向かって、マイク・マイヤーズとダナ・カーヴィよろしく、平伏して拝ませていただきます。平に、平に…。
ゲスト出演していた佐野史郎さんは島根の中学に通っていたとき見たそうですが、13歳で見たのはテアトル東京か?それともOS劇場か? OS劇場やったら、一緒や一緒や〜。ちなみにこの作品、封切り時の興行成績はそれまでのシネラマ映画と比べて最低でした。世界各地ではヒットしたそうですけど、日本だけ遅れてましてん。それを今、取り戻そうとして焦ってまんねんな。
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