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2023年12月17日23:05

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「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」を見て。〜夢を包むベルベットコートの裾をなびかせるのは、傍に居る仲間からの風〜

現実世界の権利者が引き起こす紛争に不正の横行からしたら、一応、敵役の存在は居るけれど、のどかでピースフルな世界観が展開。殺人鬼とか悪魔や特攻とか、不安や哀しみなんか入り込まない穏やかな歳の締め、希望に満ちた年明けを迎えるには打って付けです。

過去2回映画化されたロアルド・ダールの児童文学作に出て来るチョコレート工場長のウィリー・ウォンカの若き日を、映像用に創造した前日譚。勿論、当時鉄板のコンビだったティム・バートンとジョニー・デップのヒット作の柳の下のドジョウ狙いが発端ではあるが、過去の遺産に安易に乗っかるだけの代物ではございません。

作り手のお国柄が伺えるコスチュームや道具に、街並みを含めたセット等の作り込み具合とデザインの仕立ての良さ。セリフの進行程度に抑えて、過剰な心情発露に走ってウルサクならず、踊りも演者を引き立てる控えめなモブシーンに留めて出しゃばらないミュージカルシークエンス。T.バートン版にある様に斜に構えて茶化したりせず、原案である作家の持ち味を素直に受け止めたかのような、言葉遊び(使用言語の違いで、我々には馴染みにくい部分がありますが)や、チョコ中毒が過ぎて車を降りるのに四苦八苦する警察署長の描写を例として稚気に溢れた笑いを追い求める児童性は忠実に押さえながらも、ベテラン俳優が特殊技術の粋を借りて振り切って魅せる小人が発する、中毒性の強いシニカルさで、大人にも充分耐え得る釣り合いを保っていて。

何より、才気走ったこれから世に出ようとする若造が、お金や地位だけでは得難い「プライスレス」なものに気づくまでの過程を抑えた、ドラマの芯が一本通っているので、先に挙げた見所がとっ散らからず纏まっており、ただ空虚なホリデーシーズン用のハリボテ大作に陥らず、結果、過去作の遺産価値の拡大に貢献したのでは。

夢を諦めない姿勢を抱く事を若き主人公を通して描いているけれど、その過程でチヨコを作る「才能」を育む自己形成には、話は割く事はなく。彼が持ち歩くトランクに、それが集約されている。思い描くチョコに必要な「液体材料」を調合して、それをバックの大きさに集約された工程ラインを流れてお菓子が排出されるミニチュア工場なのだけど、薬品の貯蔵スペースに、挿入口から出口まで流れていく仕組みが鞄の中にギッシリ作り込まれている。

それは、クレイアニメ「ウォレスとグルミット」に出て来る朝食マシンやお掃除車の出発準備装置だとか、古き時代の「007」の諜報部特製武器や車両のように、持ち物類や些細な作業を設備的な広さに拡大する作り込みへの拘りは、英国製ならではと決めつけたい。ウォンカのトレードマークであるラベンダー色のカシミヤコートと、いろいろ仕掛けられた山高帽も、キャラクターに馴染んで「夢」を包み込む包装のごとし。

総ての作品は見ていないけれど、本作は、広く知られた役を担ったお陰で、ティモシー君の魅力を浸透させる「名刺」的意味合いを果たして、次の年の「DUENパート2」への敷居を下げてくれたことでしょう。

陽の当たる場所から追われてしまった名匠との1回限りの競作となってしまって残念だった「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」でも、ピアノの弾き語りで甘い歌声は聴いていたけれど、今作では、そのデリケートさが、まさに世に出ようとする青年の初々しさを引き立てて、より響いております。文字を読むのが苦手で、人懐っこく弁舌も軽やかなのに噛み合わない。ウォンカの素直さ純真さとコミュニケーションの妙なズレで、風変わりな感性をナチュラルに表現して。1回目の映画化のジーン・ワイルダー作品は未見だけれど、この前のジョニデ様のねじ曲がったウォンカが「完成形」とするなら、あともう一作分、ウォンカの人格形成過程が必要なくらい、先代とは、似てかけ離れた人物像な感じもしました。

まさに今盛りの屈託ない王子さまに対して、元ロマコメの帝王ビュー・グランド様は、ここ最近、英国製作品で渋いロマンスグレイの見た目から拗ねて斜に構えたユーモアを放って、全盛期とも違う重ねた年輪ならではの魅せ方に移行していますけど。それが、特殊効果をもって、持ち味が更に強調されて。それこそ、夢にまで出てきそうなインパクト。

作品の前半、夢の意実現に向けて活発に動くべきところウォンカは、「足止め」を喰らって。そこで、これまた夢には関係の無さそうなオジサンやオバサンが絡んで来て。途中、気を揉んでしまったのですが。回り道と思われた経緯の意義が明らかになった瞬間、伝えたかった本当の意義を知ると共に、二番煎じの空虚なファンタジーで終わらせず、魂を吹き込んだポール・キング監督の職人気質を実感したのです。そして、ウチの人から面白さを聴かされた「パディトン2」が、ただのCGキャラ見せ映画じゃなかったのだなと思いを馳せたのでした。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
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