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2022年12月29日02:03

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「マッドゴッド」を見て。〜ハイテクへの怨嗟とローテクの伝承〜

80年代のメジャー洋画の洗礼を受けて、映画を見る目を養って来た者としては、「S.W./帝国の逆襲」での氷の惑星上を「かっ歩」した、帝国軍の雪上をのし歩く巨大兵器に、反乱軍が監視をかい潜って侵攻する際に、「馬」代りに現地で徴用したのだろうカンガルーとダチョウをミックスした歩行生物。「ロボコップ」での、警察業務を委託された企業が、民衆鎮圧に用意した、銃塔から脚が生えたかのロボット。

大きさの大小の違いはあれ、どれも、「脚」の動きから、威圧感や、生命感に、滑稽さを、作り物の動きで脳内に、スッと沁み込まされて。それを監修した、フィル・ティペットの名前は、どういう訳か、記憶に留まっていた。

特に、追っかけでも無いので、本作の公開にあたって、やっと、ご尊顔を、マジマジと拝んだくらいのニワカ愛好者だったりするのだが。

結果的に関わる事になった「ジュラシックパーク」で、ご存知の通り、CG立体造形の「恐竜」が、映像内を「かっ歩」する事になって、自身が、創意工夫を重ねて習得した、模型を作って動かすストップモーションアニメの将来に絶望する。そして自費で、コツコツ製作始めた映像を取りやめにしたのだが、自身のスタジオで働く年若いスタッフらの働きかけで製作を再開し、資金公募の力も借りて、苦節30年を経て完成に漕ぎつけて、我が国にもお目見えとなったのだ。

日本の配給会社のロゴから、いきなり本編に入る。普通、本国の配給会社や製作主幹会社のロゴが、幾つか挿入されて、「やっと、始まったか」ってのが、慣らされた鑑賞パターンなのだが。この辺りからも、商業映画とは、テイストが異なるのは、察せられようものである。

根気の要る映像制作の手間を積み重ねた84分のランニングタイムにあって、全く、セリフは、御座いません。その代わり、音楽は、ストップモーションアニメの背景で、ほぼほぼ奏でられている、隼サイレント映画の様相。文明の荒廃した「世界」に、人ではない生物が蠢く地下世界へ、ヘルメットとガスマスクに、皮製のコート(画面で見る限り、人形に着せているにしては、材質がしっかりしていそう)を羽織った人間が、ゴンドラに乗って、そこへ下降し、地獄めぐりに等しい、地下探索を行う工程が展開する。

30年前から、ストップモーションだとか、漫画のフィクションでは、地下世界に潜るシュチュエーションが、好まれるようで。セリフもナレーションも無く、音楽に彩られる、凝った背景美術に、CGモデリングには無い違う質感、実体感のある人形に、性格や心理表現を動きに付けた映像を追って、途中までは、このジャンルに於ける名匠の「仕事」を堪能できたのだけど。

映像製作途中に出くわした、CGに取って代わられてしまう事への、絶望や怨嗟を籠めているのか、PG12の水準とタカを括っていたら、ストップモーションアニメとして、作り物の範疇を、急に飛び越える描写が現れて。人形同士で、刃物で切断するのは、まだ客観視が効くのだけれど。所々、生身の人間も写り込んで来た途端の血糊と、解体は、作り物でも、人によっては、「耐性」を試されるかも。

包帯で繭状に縛り上げた「ヒト」の中を抉りだして、何か探しているようなのだけど。血に混じった、ネックレスや、コインばかり、摘出されて。ストップモーションアニメの飾られた栄華や富が、別の「存在」に奪われるとでも、比喩しているのでしょうか。とうとう、目的の「モノ」を、体内から掻き出されるのですが。

その後も、まったく、説明も、セリフも無く、展開して行きます。所々、くすぐる様な緩さも忍ばせたり、地下に潜る経緯のフラッシュバックも挿入したりするのだけど。音楽と相まって進む前半の無声映画の様に仕立てて、背景造作も地下世界の営みを見せる動きも、ハマっていたのとは、うって変わって集中力も散漫になってしまう。

個人的には、デビッド・リンチの「イレイザー・ヘッド」の生物を連想した、掻き出された「モノ」は、いろいろと手を渡り、原形留めない形状に変えられるのだけど、全宇宙に跨る「知恵」となったのだろうか。ともかく、セリフも決めごとの提示も無く、見る人の想像に委ねられているので、その辺りの解釈も、見る人の数だけあるのでしょうけれど。

ともかく、デジタル技術に、自身が培った技法が追いやられた「恨み辛み」も在って、それは、見る人には想像の付かない心境であったとは、想像に難くないのだけれど。後半に、息のつまる地下社会から、宇宙に視界が開けたというのは、本作の製作を手伝う、監督の元で育つスタッフに技法の未来を託す、前向きな意志の表れなのかと受け取ったりもしましたが、後半は、結構大変な旅路でした。

革ジャンの男を地下世界に送る首謀者として、「ウォーカー」以来、監督作品を見ていない、アレックス・コックスが、演者として、この執念の映像に協力している姿を見られたのも、儲けものでした。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
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