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2022年02月20日16:22

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「ザ・ビートルズ Get Back:ルーフトップ・コンサート」を見て。〜つい昨日にあったかのセッション映像の臨場感に、うっかり四人の復活を願いそうになったりする。〜

1969年当時、最新アルバム収録曲の屋外演奏録音も兼ねて、それまで長い間スタジオに引きこもり、レコード制作のみの活動でスタジオに引きこもっていたビートルズの四人が、閉ざした扉を漸く開けて「下界」に出て、久しぶりに揃って演奏する。事前の告知も無く、拠点としていた、ロンドンはサビルロウに建つ自社ビルの屋上での突発、ゲリラ的なお披露目で、聴衆の目前には姿を現さず、思い浮かべるコンサートの体裁は、なしてはいないのだけど。

カタチはさておき、グループの歴史にあって、それがラスト・コンサートである。ラストと付くと、日本人感覚では、「最後」つまり、もうこれっきりって行き詰まりムードに覆われガチだけれど。英語としては「この前の」って言うか、もっとも最近的な意味合いもあったりして。そんな慣用例を引き合いに、つい、この前、ロック史に足跡を残す四人の再活動が在ったかの錯覚を呼び起こす、再現性、臨場感に包みこまれる。

古典的ファンタジー小説の映像化の最終章でオスカーウイナーになったピーター・ジャクソン監督は、コロナ禍に公開された第一次大戦の記録映像の再生に続いて、アップル社が保管していた、彼らの57時間に及ぶ記録映像を復元のうえ再構築して、既に70年代に発表されていた「レット・イット・ビー」とは違うアプローチのドキュメンタリーに取り掛かるニュースを聴いてから、指折り数えて待っていたのですが。

膨大な映像ストックの取捨選択に行き詰まったからか、発注元のディズニーのビジネス戦略なのか、3本に渡る配信となってしまって、ガッカリしていたところに、取り上げられたルーフトップの開催日1月末日にあてた、IMAXのフォーマットにコンバートされての劇場でのお披露目。足元見られているのは承知のうえだけれど、四人揃った貴重な演奏映像を目の当たりにできるとなれば、向こうの目論見に乗るしかないじゃないですか。

去年の「アメージンググレイス」に、「サマー・オブ・ソウル」と、過去のフィルム映像のデジタル修復の威力を、今回も、まざまざと見せられた訳で。つい去年位に、撮って来たかのようで、半生記の隔たりを感じさせる余地など、全く無くて。ビルで演奏する彼らを捉えるカメラが5台に、向かいのビルから、アップル社の屋上の様子全体を収めるカメラと、サビルロウの通りの様子を収めるカメラ3台に、会社1Fの受付の様子を盗み録りするカメラの計10台分の映像から絞った映像を流すだけで無く、時には、一つの画面上を分割してシンクロ展開でも見せて、単にコマを引き延ばすに留まらず、大画面を活かして、豊富な素材を構成してます。

レコード音源でしかビートルズに接した事が無かったところ、5年前公開されたロン・ハワード監督によるドキュメンタリー作品の併映だったシェイ・スタジアムでの、コンサート活動意欲を減退させる、黄色い声の中での四人の演奏姿が見られて。それまで、レコード録音を通して馴染みだった曲が、実際に、演奏される様子を目の当たりにして、音の実在というか、サウンドが産み出される「その時」を、映像を通してですが、受け止められた意義をありありと受け止められました。今回も、各自が担当する楽器や、ボーカルにコーラス音声も含めて、異なるカメラが捉えた映像を、IMAXの大画面の中で分割された窓の中で同時展開させる構成をとっているので、さんざん聴いて来た有名楽曲が「醸成」される瞬間に、まさに立ち会う事となって、胸の内は高鳴るばかり。

本編で、使用される映像は、本人達のパフォーマンスに留まらず、サビルロウの通りで足を止めて聴き入る人々の表情やインタビューコメントの他、騒音苦情の通報を受けて、本社ビル受付で中止要請を詰め寄る警官と受付嬢のやり取りも挿入される。「コンサート」での曲の披露と併せて、オフィス街に突如沸き起こったゲリライベントが、警察指導で止めになってしまうのか事の成り行きにも気を持たせて、監督は、ちょっとした緊張の糸も張って、我々に見守らせる。

同じイベントに触れた記録映画の方の「レット・イット・ビー」を見ていないので、その作品での撮影素材の扱われ方が分かりませんけれど。

レコーディングと撮影スタッフや、オノ・ヨーコ筆頭にメンバーに近しい方々と並び、高価なIMAX料金を負担する我ら観客を、アップル社のルーフトップ特等席に招く意味合いは勿論のこと、姿は目前に在らずとも何年振りかにビートルズの生演奏に地元ロンドン民たちが出くわした事、警察官たちが、1階の受付での引き留めを振り切って演奏するメンバーの背後へにじり寄るまで、綿々と続く時間の流れの中に埋もれてしまう「ある日」の一コマとして、多くの素材から抽出しているよう。

60年代初め、鮮烈なデビューから時代の寵児として祭り上げられて。黄色い声に演奏が掻き消されるのに嫌気がさして、演奏を見せなくなった四人が、スタジオ外で、揃ってプレイする意義を、その時噛みしめたかに写りました。サウンドを聴きつけて、彼らの目前で見られる近くのビルの屋上に集まった聴衆から放たれた野太い「ロッケンロール」って声援に、ジョンが、その方向に指さして「you too」(あなた方も)って、掛け声を返す光景からも、彼らを求める人達の前での演奏の機会があって、創り出された「音」が完成されるのを確認したかのような展望を、見出さずには居られなかった。

その後、スタジオに四人が再び籠って、「ロング・アンド・ワインディングロード」と「レット・イット・ビー」の録音テイクを重ねる様子が、披露されて。屋上の生演奏同様、関係者でない限り、目の当たりに出来ない光景と共に、とてもこれが「最後」とは思えない、この後の、あらたな四人の活動に期待を抱かせる、ある日の「夢のような」一時の余韻に浸るのでした。

限定上映が終わり、映画館至上主義を標榜する者としては、感想をあげる事で、この「ルーフトップ・コンサート」を含む、ドキュメント3部作が視聴できるディズニーの配信ポータルの宣伝になってしまうのが躊躇われたけれど、この2月25日から、再上映が始まるので、関心が少しでもあって、都合の付く方であれば、迷わず足を運ぶ事を、強くお勧めいたします。

拙文にお付き合い頂き、ありがとうございました。
シネマサンシャインららぽーと沼津 IMAXシアターにて

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