いつもの英会話の教材に、アレクサンダー・ペイン監督の「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」を選びました。2時間13分もあるけど、やはり“痛み”がしみるええ映画ですわ。ポール・ジアマッティ扮する“偏屈者”の歴史教師ポール・ハナムが主人公で、クリスマス休暇中に帰省できず補習をさせられる生徒たちの話です。
ということてホールドオーバーとは、休暇中なのに補習のため寄宿舎にとどめ置かれるという意味なのですが、やはり“留年”という意味にも使われるらしい。僕は教科書持ち込み試験だった「ソ連法」にしくじり、まさかの留年に至ったわけで、この映画の生徒たちと先生の気持ちは他人事ではありません。
imdbの物語欄には、この歴史教師のことを“偏屈者”という言葉を使って説明しています。curmudgeonの発音は“kɜːrmədʒən”だそうですが、カーマジャンに近いのかな。偏屈という部分よりbad temper=短気な人、もしくは、grumpyという意味のほうが近いと先生は言ってました。後者は、「ラブリー・オールドメン」(1993)の原題じゃ。
そして使われている歌の中にIn the slumber of the morningという歌詞がありました。slumberって、僕にはビートルズの曲“ゴールデン・スランバー”が浮かびます。ここでは“安らかで深い眠り”という意味のようですが、“まどろみ”という意味なら、浅いはずですね。でもdeep sleepのようです。
ホールドオーバーズたちの食事を世話する調理人メアリー(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)も、寄宿舎に滞在しています。夫を若くして亡くし、息子をこのバートン校に入れたのはいいけれど、一流大学へ進学させる資金がなく、息子は二十歳になる前にベトナムで戦死してしまいます。そこには1970年という時代背景が浮かび上がるのでした。
そのメアリーが見ているテレビの「新婚ゲーム」という番組を、偏屈教師が知らないと知り、“What planet have you been living on?(いったいどこに住んでる人?)”と言います。「2999年異性への旅」(2000)の原題が、「What Planet Are You From?」でしたね。ちなみに「新婚ゲーム」は、1966年から2013年まで続いた長寿番組のようです。
この先生の専門がペロポネソス戦争だそうで、ちょうど僕は「トロイのヘレン」を見直したばかりでした。でもペロポネソス戦争はアレキサンダー大王より1世紀以上古い。さらに“カルタゴまでが専門”とも言ってますが、カルタゴはアレキサンダーより1世紀は後年です。ホメロスがトロイ戦役のことを謳ったのは紀元前8世紀というから、もっと昔。
反逆的な劣等生タリーを演じているドミニク・セッサは、いろいろフランス語の単語を用いたりします。この作品が映画デビュー作だそうで。母親が大金持ちと結婚するために息子や前夫をスポイルしていたらしい雰囲気が痛烈でした。クリスマスにケータリングでしか食事をしたことがなかったことを告白します。で、邪魔な息子は寄宿舎生活か。
社会見学と称してボストンへ出かけ、タリー君と映画館に入るのですが、それが「小さな巨人」というあたりも“偏屈”らしくていい。おまけにその後背景に流れる歌がキャット・スティーブンスの“the Wind”でした。スティーブンスが後にイスラム教に改宗する事実を知っている僕には、けっこう“痛い”のです。さすがはアレクサンダー・ペイン監督ですね。←綴りはPayneですけど。
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