この映画を僕は日本映画専門チャンネルで見ました。番組表をチェックしていて、こんなドキュメンタリーがあるんだと知ったしだい。とりあえず気になった作品は録画し、その録画が“積ん読”になったとしても、30分ルールで却下しても、大した“投資”ではないから構わないのです。←CPRMのDVD-Rは、いまや1枚25円程度。
物語は、岐阜県にある白川町黒川から、黒川開拓団として満洲国に渡り、丸5年を満州で生活した女性たちが主人公。白川町の佐久良太神社にある「乙女の碑」の脇で行われた新碑文の除幕式を取材した松原監督は、その「乙女の碑」に込められた、乙女たちの言葉を取材します。松原監督は2019年にテレメンタリー「史実を刻む〜語り継ぐ“戦争と性暴力”〜」を制作、さらに取材を続けて2025年に発表したのが、この「黒川の女たち」でした。
この映画の公式ホームページによると次のとおり
>ソ連軍が満洲に侵攻した。守ってくれるはずの関東軍の姿もなく満蒙開拓団は過酷な状況に追い込まれ、集団自決を選択した開拓団もあれば、逃げ続けた末に息絶えた人も多かった。そんな中、岐阜県から渡った黒川開拓団の人々は生きて日本に帰るために、敵であるソ連軍に助けを求めた。しかしその見返りは、数えで18歳以上の女性たちによる接待だった。接待の意味すらわからないまま、女性たちは性の相手として差し出されたのだ。
そもそも「乙女の碑」が立てられたにもかかわらず、その碑だけでは意味が通じません。ソ連軍の侵攻を受けて満州の住人たちは、自分勝手に彼らの土地や家屋を取り上げた日本の開拓団に襲いかかったわけです。だが本来開拓団を守るべき関東軍は、ソ連軍の侵攻を察知するや、開拓団にその事実を告げずに、さっさて南へと逃げ、日本に引き上げます。
開拓団の中心人物たちは、集団自決も考えますが、それよりも団員が一人でも多く生きて日本に帰る手立てはないものかと思案したらしい。それが“数えで18歳以上の女性たちによる接待”だったのです。その発案がソ連軍からなされたのか開拓団が申し出たのかは別にして、女性たちは“接待”の意味も知らずに犠牲となったのでした。
さらに帰国後、女性たちを待っていたのは労いではなく、差別と偏見の目。節操のない誹謗中傷でした。戦時中は“生き恥をさらすな”という道徳観念が存在したわけですし。この映画はしかし、“私は昔のことだけは忘れません。満洲で死ぬか生きるかを問うたんです”と事実を語る佐藤ハルエさんや安江善子さんたちの言葉を、きちんと記録します。
たしかに“恥の上塗り”だとして取材に応じなかった人もいる。しかし途中からその考えを変えて佐藤ハルエさんたちに同調し始める人もいます。そして何より、この女性たちの孫や曾孫までが“ばあば、大好き”と懐いている。その愛に溢れたスナップショットが、僕には鮮烈でした。
孫は、“こんな話し始めたんは最近やもんな”と語り、曾孫は“ばあばのシワが好き”と抱きつくのでした。90歳になってこの家族愛の瞬間が体感できるなんて、それこそ“幸せ”ですね。だからこそ僕は、なんとしても103歳まで生きて“カーク・ダグラス超え”を実現したいと思っているのです。
ところで、この映画を僕の政治信条と相容れない政党が支援しているようだけれど、それを理由にこのドキュメンタリーを否定するつもりはありません。ここには政治的な心情とはまったく別の、人間として生きることの尊さがある。いやいや、そんな理屈でこの映画を見てはいけない。ストレートに、この映画がすくい取った人物像から学びましょう。
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